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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【毛利さんとオサムシ君へ】

2000.2.2 

 昨日は、オサムシ君がいよいよ宇宙へとんで行くぞと期待していたら、また延期でした。覚えていて下さいますよね。昨年の8月15日の「ちょっと一言」で書いたのですが。スペースシャトルに搭乗する時には、個人的な記念品を持っていけるということで、毛利さんから、“何か持っていってあげますよ”というお誘いを受けました。そこでオサムシ君に行ってもらうことにして大急ぎで標本を一つプラスチックの中に埋め込んだのです。昨年の9月に出かけるはずでしたが、NASAのさまざまなトラブルで延期。毛利さんも精神的緊張が続いて大変だと思いますが、オサムシ君も待っているはずです。
 それにしてもなんだか最近のNASAはアポロ計画の頃のようなカッコよさを失ってしまったようで、ちょっと残念です。もちろん技術にはトラブルがあるという前提で万全の安全を期すのが当然で、きちんとトラブルを発見し、事前にチェックできることは大事なわけです。
 けれども、最近の日本の様子を見ても効率と経済性を最優先させて技術の本質を見失っているのではないかと思われる例があまりにも多すぎるので、根本的に私たちの考え方を変えなければいけないのではないかという気がします。
 NASAのシャトルは、宇宙開発へ向けてのミッションだけでなく、人間の夢を載せてくれるものでもありますから。毛利さんが元気でお仕事をなさって、オサムシ君と一緒にあのニコニコ顔で帰っていらっしゃるのを楽しみにしています。

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