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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【大事なのは量ではありません】

2004.9.15 

中村桂子館長
 虫の声しきり。おかしな夏でしたが9月も半ばになると、確実に秋です。先夕、法然院でのイタリア人マルコ・メローニのバロックギターコンサートを楽しみました。開け放たれた本堂は、深山幽谷を思わせる緑と虫の声に包まれていました。時々ムササビの声も混じって。普通のギターよりはるかに繊細なバロックギターの音がそれらの自然の音と響き合う心地よさ。もし、CDにこの音が混じっていたら、きっと雑音でしょう。でも樹の香りと初秋の風の中での虫の声は雑音どころかバッハの音楽をより快いものにしてくれました。音は波長や強さなどで正確に数量化して表現できます。もちろん虫の声も。しかし、お寺の庭から聞こえる虫の音には数量では表現できないなにかがあるということです。
 このところ、外で書いたものの流用を続けていて申し訳ありませんが、この“数量では表せないもの”ということに関連して、先日書いた文を思い出しましたので今回もそれを紹介させていただきます。「中等教育資料」という学校の先生方に向けた雑誌に書いたもので、“生命を大切にする心を育てるにはどうしたらよいですか”という問いについて考えました。教育関係者は努力しています。たとえば“ゆとりの教育”。とてもよい考えだったと思うのですが・・・。量ではダメなのではないかということに気づき、それについて書いたものです。そして最後は結局“愛づる”になったという次第。また御意見を下さい。
 
 
 【中村桂子】


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