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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【生命誌講義の試み】

2005.2.15 

中村桂子館長
 昨年から、医学部のジュニアの学生さんに「生きているとはどういうことなのか」を教えて欲しいという要望を受けて、「生命誌講義」を始めました。
 今医学教育をする中で大きな二つの問題があるのです。一つは、学生さんたちが小さな時から自然の中で、たくさんの生きものと接しながら生きものとして暮らすという体験をしていないこと。テレビ、コンピュータ、ゲーム、携帯電話、・・・の世界ですから。もう一つは、高校生までに生物学を体系的に勉強し、現代生物学の基本を身につけている人がとても少ないこと。この二つが欠けていると、「生きている」ということを実感として−実感の内容は、英語のvividという言葉が当っており、それとまったく同じ感覚を表現する日本語を思いつかないのですが−持てません。
 そのような状態で、医師という職業につくのはまずいと思い、現代生物学と日常性を結合した生命誌がお役に立つと思って始めたことです。そこで、どうせやるなら生命誌を医学・医療という切り口で“生命誌−医師を志す人のために”という形にしてみたいと思い、講義を始めました。館内にいる学生さんたち(医学でなく生物学専攻ですが)に聞いてもらって、若者たちが考えるための素材を作ろうという試みです。外からも関心のある若い方が参加して下さると嬉しいと思っています。
 
 
 【中村桂子】


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