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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【中東の小さな国チュニジア】

2006.7.14 

中村桂子館長
 地球の中で、国際社会の中で、どのような日本であろうとするのか。それを考えずに毎日毎日起きる“事件”に大騒ぎをしているだけでは、これからどうなるのでしょう。基本は、なんとかして60年間戦争に関わらずに来たことを大切にすることでしょう。確かにそこにはアメリカの厚意がありました。感謝はします。とくに戦後を子どもとして過した身はそれがよくわかります。でも本当に感謝しながらも、私たちはなんとしてでも戦争に関わらないためにはどうすればよいかを考える道を選ぶのがまっとうな選択だと思うのです。そのためには私たちに考えさせてもらわなければなりません。自分の責任で行動する他ありません。日本だけではない、すべての国が戦争から自由であるための必死の努力をする他ないのだと思います。
 先日、神戸大学の五百旗頭先生(国際政治)からとても興味深いお話を伺いました。同じ中東でも産油国でないチュニジアが、同じように鉱物資源のない日本が豊かさを実現したのは、人間が素晴らしかったからだと日本を敬愛し、お手本にしているというのです。そして教育に力を入れ、高等教育まで国費なのだそうです。国家予算の20%をかけて。フランスから独立する際、隣国アルジェリアと領土紛争があったけれど、大統領が相手に譲る決断をしたとのこと。もう一つの隣国リビアとは、資源豊富な大陸棚を巡っての争いがありましたが、これまた紛争を避け、共同開発の道を選んだのだそうです。いずれも、軍備に力を入れたら、望みの教育ができず、本当に豊かな社会への道は歩めないという判断によってのことです。
 日本をモデルにしているということでしたが、こちらから見れば、私たちがお手本にしたいような話です。筋が一本通っています。中東と言っても、産油国に比べてあまり注目されず報道も少ないので、ほとんど知らずにいましたが、仲間として大事な国だと思います。歴史を見たら、出発点はカルタゴ。そういえばポエニ戦争でローマに破れたという話があったと思い出しました。19世紀末からはフランスの属領、外との関わりの中でいかに生きるかという知恵を積み重ねた結果の選択が、軍事ではなく教育なのだとわかりました。外を見ると言いながら、大きく見えているものしか見ていないのが実情です。今回、チュニジアの教育について教えていたゞき、目からウロコが落ちました。他にも学ぶべき国はたくさんあるに違いありません。
 
 
 【中村桂子】


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