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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【生命誌が教育につながって・・・(1)】

2007.5.31 

中村桂子館長
 「教育再生」。立派に聞こえますが、何をしたいのか、よくわかりません。それに比べて、“すべては君の「知りたい」からはじまる”と言われれば心がはずんで、たくさんのことが学びたくなります。これは、京都市立堀川高等学校の学校案内に書かれている言葉です。京都市教育委員会と堀川高校の先生方の力で、「公立学校の奇蹟」が起きたこと御存知でしょうか。先日、この学校に招かれ、そのすばらしさにびっくりしました。キーワードはまず探求すること。そこから「受けとる、考える、判断する、表現する」力をつけようというのです。生命誌で考えていることとピタリ重なっているのに驚きました。話せば長い物語りなのですが、校長先生の次の一言がすべてを表しています。「一人一人の子どもの希望をかなえる手伝いをし、達成できるようにする」進学率をどうするとか、偏差値をどうするという数字を出していないところが魅力的です。そして結果は、進学率が急増。周囲から注目を浴びる存在になったのです。数値目標ばやりの昨今ですが、この現実を見ると、数値だけをあげるバカバカしさははっきりします。
 興味深かったのは、学校案内の初めの文章です。「地球に誕生した直立歩行するヒトー火を用い、道具をつくり、そして、言葉を使う唯一の生物。・・・人間を知り、自然を知ることで築き上げられてきた歴史の延長線上に、現在、わたしたちが立っています。」
 これって生命誌の視点です。日本中の高校がこうなってくれたらよいのに。「教育再生」とおっしゃってる方、どうお考えになるか伺いたいものです。実はもう一つ、京都の実例を次に紹介します。


 【中村桂子】


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