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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【本気で農業を考える人を育てることは大事なのに】

2010.9.1 

中村桂子館長
 「農業者大学校」をご存知でしょうか。農業のトップリーダーを育てる学校として、これまで40年ほどの間に1200名以上を育ててきました。2009年の卒業者は半数が非農業家出身であり、しかも90%は就農しているというデータがあります。実はこの学校を熱心に育ててきた農水省のOBの方たちの熱意に動かされて、私もつくばまで授業に行きました。学生さん一人一人が農業への思いを持っていることがわかり、農業の人材育成の場として大事だと思っています。ここの同窓会会長は27歳の坂井涼子さん。以前雑誌でとり上げられた彼女の記事が忘れられません。新潟の高校生だった彼女は、東京のタレント事務所にスカウトされます。そこで、よりスリムになるために(その頃の写真は充分スリムに見えましたが)お米を食べないことを求められるのです。米作農家に育った彼女は、両親がいっしょうけんめい作っているおいしいお米をなぜ食べてはいけないのかと思うのです。悩んだ末、事務所を辞めて新潟に戻り、本格的農業者になるために農業者大学校に入りました。そして今は、皆から推薦されてとても魅力的な同窓会会長というわけです。雑誌にあった写真を紹介します。
 実は、この学校が行政刷新会議の事業仕分けで廃止と判定されました。そこで今、坂井さんたちが中心になって署名を集め存続を求めています。私も存続要請の応援団に加わっています。確かに、定員80人に対して入学者数が60人など数字的には問題が見えるのですが、ここの卒業生たちの熱心さを見るとこれからの農業を荷う人材育成の場としてとても重要であり、定員を満たす方向に持っていくことが大事だと思うのです。農業高校も定員割れを理由に消されそうになっています。これも、もっと農業に進む若者をふやす努力をするのが筋だと思います。農業は21世紀の重要産業なのですから。問題点の見直しをしながらの存続。スーパーコンピューターのような派手さはありませんが、個人的には国際的視野と高い経営能力、技術力をもつ農業経営者の育成はスーパーコンピューターよりも大事というと叱られそうなので、少なくともスーパーコンピューターと同程度に大事と思っています。
農業者大学校同窓会会長の坂井涼子さん
農業者大学校同窓会会長の坂井涼子さん

 【中村桂子】


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