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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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仕事を楽しみ、生きることを大切に

2013年6月3日

中村桂子

日本経済新聞出版社が発行している「0歳からやっておきたい教育」という雑誌があります。本来私は面倒なことは嫌いで最初から計画的にきちんとというのが苦手です。そこで、0歳は元気に泣いていればいいかなと思っている口なのです。でも今回ちょっとしたご縁で送っていただき、読んでみると若いお母さんたち健気でやはり応援したくなります。そんなにがんばらなくても大丈夫ということも含めて。

この雑誌が「本物を育てる」という特集で「本物ってどんな人」というページを作ったのです。そこに9人が載っており、なぜかその一人に私がいます。誰がどんな基準で選んだのかわかりませんし、私が本物かどうかがとてもあやしいことは本人が一番よくわかっています。ただ、このページで嬉しいのは、一緒にいる方たちが私が好きな人なのです。お名前をあげると、なぜその方たちとあなたが一つのページに並ぶのと言われるに違いないのですが、たとえ紛れこみでも、こういう方と一緒にしていただいた嬉しさは大事にしたいと思います。

まず宮崎駿さん。「風の谷のナウシカ」は「蟲愛づる姫君」への思いから生まれた作品と知り、勝手にお仲間と思っています。生きることへの向き合い方が好きです。ミヒャエル・エンデさん。皆、さんづけになっています。「モモ」は小さな町に時間ドロボウが現れ、皆が忙しくなってトゲトゲしていくお話。時間をとりもどす女の子モモは、まさに生命誌が洋服を着て歩いているようです。小澤征爾さん。もちろん指揮者としても尊敬しますが、年一回の成城学園のアマチュア合唱団のコンサートで楽しそうにしていらっしゃる時の、仲間を大切にするお人柄が魅力です。昨年は体調不良で舞台には上がられませんでしたが、客席で皆との交流を楽しむ姿がすてきでした。松井秀喜さん。野球はテニスやサッカーほど好きなスポーツではありませんが、とても好青年、いいなと思います。スティーブ・ジョブズさん。とても遠い人ですが、アップル・コンピュータの考え方は魅力ですし、ITという技術の世界にいながらとても人間的な感じがして好きです。そして中村勘三郎さん、シルヴィ・ギエムさん、若田光一さん。

亡くなられてしまった方もいますが、皆さんそれぞれのお仕事を楽しんでいる、生きることを大切にしているという感じがいいなと思います。そして、仕事を楽しみ、生きることを大切にするという点では、私も小ぶりながらコツコツやってきたかなと思い、これからも続けようと思います。

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