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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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天才に学ぶ道を教えていただいて

2015年11月16日

作家の高村薫さん。研究館顧問として、年一回は必ず来館され館員と接して下さっています。また映画「水と風と生きものと」について、これ以上ないというありがたい感想をいただきました。一度ゆっくりお話をしたいという思いが叶い、「季刊生命誌」次号のトークに登場していただきます(楽しみになさって下さい)。

ところで、お会いすることになっていた前日、新潮社から新著「空海」のお知らせが舞い込み、びっくり。一年間、共同通信からの配信による新聞連載があったのでしたがそれに気付かず、空海の取材で全国を飛びまわっていらしたことをまったく知らずにいました。早速拝読しました。教えられることばかりでしたが、「身体体験に裏打ちされた言語宇宙」というところはとくに印象的でした。身体体験の最たるものは、若い頃の室戸岬御厨人窟みくろどでの体験「谷響を惜しまず、明星来影す」、つまり明星が体にとびこんできたという話でしょう。その後も空海は体験を大事にしました。そして、その人だからこそ、大日経にある「地・水・火・風・空」の五大に「識」を加えて六大にするという独創が生れたのだという指摘は、心にすとんと落ちました。そこでまた単純に、生命誌はまさに六大を求めているのだと妄想しています。凡人が仕事をする時は天才に学ぶのが最もよい方法だと思いますので、空海を大事にしていきます。もう一つ「曼荼羅」もありますし。実は「生命誌マンダラ」製作のきっかけは東寺の「立体曼荼羅」であり、その時に私なりの空海を勉強しました。でも高村さんの「空海」には、改めてなるほどと思うことがたくさん。女性による空海の話を読んだことがなかったこともあって新鮮でした。

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