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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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—— 子どもって面白い ——

2016年3月1日

建築家の伊東豊雄さんが、是非見せたいものがあるんですとおっしゃって映して下さった一枚の写真。くねった管のようなものが続いているのはわかりますが、なんだろう。首を捻っていましたら、小学校4年生の男の子がつくった「動物といっしょに暮らす家」だと教えて下さいました。

伊東さんは、「子ども塾」を開いています。小学生が、家ってなんだろう、町ってなんだろう、住むってどういうことだろうと、建築という切り口から暮らしを考えるようにしたいという願いをこめた活動です。そこでの今年のテーマが、「動物といっしょに暮らす家を考えよう」なのだそうです。

「恐竜大好きの小学校4年生が悩んでいたので、BRHの映画『水と風と生きものと』のDVDを貸したら、とても感激して、早速つくったのがこれなんですよ」。38億年前から続く管のあるこの家は、三層に分れています。一番大きなところは恐竜、それから始祖鳥、次はなぜかムササビくんが暮らしています。もちろん自分の暮らす場所もありますが、それはとてもとても小さいのです(写真では細かいところはわからかったのですが、伊東さんの解説です)。

小学4年生が、「38億年の生命誌物語」に感激し、すばらしい構想をしたことに、今度は私が感激です。男の子の中に38億年が入り込み、大好きな恐竜といっしょに暮らす家が自然に浮んできたのでしょう。伊東さんは、「人間の場所がとても小さい」というところが気に入っているようでした。確かに、現代社会はなんでも人間中心ですから、この発想は貴重です。

私たちはつい、大人は面倒なことを理解できるけれど、子どもは単純と思いがちですが、そんなことはありません。常々思ってきたことですが、ここでもそれがわかって嬉しくなりました。自分を棚に上げての話ですが、最近の国会でのやりとりなど、さまざまな場での大人の劣化ははなはだしく、どうなってしまうのだろうと先行き不安です。子どもに期待しよう。そのためには子どもをいじりまわさないで、思いきりやりたいことができるようにしなければならないと思ったことでした。

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