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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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子どもに学びましょう

2016年7月15日

一昨年「沖縄慰霊の日」に朗読された小学生の「平和の詩」を紹介しました。そのあまりのすばらしさに何度読み返したことか。そして今年もまたその日が来ました。沖縄戦71年です。今年の詩もなんともすばらしい。小学校六年生の仲間里咲さん。絵本に「セミの鳴き声は戦没者の悲しみを叫んでいる」という意味の文があったことを思い出して書いたと紹介されています。そこから始めて、セミは悲しみではなく平和への願いを声にしているのだと思うようになっていく心の動きがみごとです。何も中味のない、心に響くこともない大人の言葉を日々聞かされ続けているので余計印象的です。言葉は出たらめを言うためにある、ごまかすためにあると思っているとしか言えない大人たちに、これをよく読んで勉強し直して欲しいと思います。子どもがすばらしいということは、明るい未来が期待できるということであり、嬉しい限りです。

平和の詩全文

「ミーンミーン」
今年も蝉の鳴く季節が来た
夏の蝉の鳴き声は
戦没者たちの魂のように
悲しみを訴えているということを
耳にしたような気がする
戦争で帰らぬ人となった人の魂が
蝉にやどりついているのだろうか
「ミーンミーン」
今年も鳴き続けることだろう

「おじぃどうしたの?」
左うでをおさえる祖父に問う
祖父の視線を追う私
テレビでは、戦争の映像が流れている
しばらくの沈黙のあと
祖父が重たい口を開いた
「おじぃは海軍にいたんだよ」
おどろく私をよそに
「空からの弾が左うでに当たってしまったんだよ」
ひとりごとのようにつぶやく祖父の姿を
今でも覚えている
戦争のことを思い出すと痛むらしい
ズキンズキンと・・・
祖父の心の中では
戦争がまだ続いているのか

今は亡き祖父
この蝉の鳴き声を
空のかなたで聞いているのか
死者の魂のように思っているのだろうか
しかし私は思う
戦没者の悲しみを鳴き叫ぶ蝉の声ではないと
平和を願い鳴き続けている蝉の声だと
大きな空に向かって飛び
平和の素晴らしさ尊さを
私達に知らせているのだと

人は空に手をのばし
希望を込めて平和の願いを蝉とともに叫ぼう
「ミーンミーン」
平和ふぃーわ世界しけーどぅ大切てーしち

※ 平和ぬ世界どぅ大切 = 平和な世界が大切

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