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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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「人新世」って何だか気になります

2016年10月17日


近年、Big Historyという宇宙の始まりから歴史を考える動きが盛んです。生命誌は、自然科学の側から歴史的視点の重要性を考えているので、歴史学の側から自然科学をとり込む動きが出てきたのはありがたいことです。文理融合などと言わなくともピタリと重なります。ところで、Big Historyでは「現代・アントロポシーン」という区分をしています。Anthropoceneの日本語訳は「人新世」、地質年代表には右のように書かれています。更新世(Pleistocene)は主として氷河期、それが終った完新世(Holocene)では私たちの祖先が農業を始め、いよいよ人間活躍の時代になるわけです。教科書では、現在は「完新世」です。

今世紀の初めから地質学者の中に、近年人類が地球の化学組成や気候に影響を与えており、新たな地質年代「人新世」に入っていると考えた方がよいというグループが出てきました。そして今年の8月29日、南アフリカのケープタウンで開かれた第35回国際地質学会議で、これを正式に採用するか否かの検討が行なわれたのです。専門家による審議がすでに7年にわたって行なわれており、全員が「人新世」はありと考えているとの報告がなされたようです。最も、公式の名称にするにはまだ始まってからの期間が短か過ぎるという意見もあるのは当然でしょう。

「人新世」はいつ始まったのか。まだ意見が割れていますが、「核兵器の使用の痕跡」をその始まりとするという意見が多いようです。そこで20世紀半ばを始まりとすると、実は、二酸化炭素やメタンガスの大気中濃度、成層圏のオゾン濃度、地球の表面温度、海洋の酸性化、海の資源と熱帯林の減少などがすべてこの時期に始まっているのです。研究チームはこの他に人口増加、大規模ダムの建設、海外旅行の増加もあげています。地質年代を変えてしまう人類という存在。人新世は人類絶滅で終るということになるのだろうかと、のんびり屋の私も考え込みます。

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