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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【クモの都合】

秋山−小田康子
 オオヒメグモを実験材料として使い始めて、かれこれ7年。思いがけず長い付き合いとなりました。そしてなんと時の流れるのが早いことか。オオヒメグモは有り難いことに、当初の予想以上に実験のしやすい生き物であることが分かってきました。7年間の努力の甲斐(?)あって、少しずつ実験の幅も広がってきたように思います。(実験手法の開発の余地はまだまだ充分にありますが。)
 なんといっても、2本鎖RNA干渉法で遺伝子機能をノックダウンできるようになったことは、大きな意味があると感じています。今もまさに2本鎖RNA干渉をした卵からデータを取っている最中です。でも、実は、これが結構大変、気合いの入れどころなのです。これまでの経験から、2本鎖RNAを注射して20日後あたりからの3回の産卵で得られる卵に、もっとも強く効果があらわれることが分かっています。一通りの実験をするのに1か月以上もかかる実験なので、20日を過ぎたらどんな日であろうと、何時であろうと、データを取ってしまわないと、という気持ちになります。でもオオヒメグモが実験しやすいとはいっても、卵を産む日にちまではコントロールできていません。1匹のメスはだいたい5日おきに産卵しますが、やはりそれは‘だいたい’なのです。前の産卵から今日で5日目、卵を産んでくれるかな、と期待していても、なかなか。それはもう、クモの都合に合わせるしかありません。産まれてすぐの卵を実験に使おうと明け方から張り込んで、空振りしたこともあります。
 そして今日は金曜日。期待に反して6日目に産まれた卵をにらみながら、固定するのは明日とあさって、土曜、日曜だなー、とため息をつきつつ、無事、卵を産んでくれたクモに感謝しています。




[ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ 秋山−小田康子]

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