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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【外部研究者セミナー】

中 秀司
 BRHの研究活動の1つに、「外部研究者セミナー」というものがあります。「外部研究者セミナー」とは、外部の研究機関から、各分野の第一線で活躍している研究者を招いて、最新の研究成果や国内外の知見について講義して頂き、その内容について議論しつつ知識を深めるためにあります。10月22日には、外部研究者セミナーとして、私たち「昆虫と植物の共進化ラボ」に関連が深い分野を研究されている、首都大学東京の松尾隆嗣博士に講義していただきました。
 私たちの研究活動には、国内外で発表される最新の研究成果を知り、その内容について議論することが求められます。そのため、私たちは国内外で開かれる様々な研究集会(シンポジウムや学会の大会など)に参加し、自らの研究成果を発表すると共に、その成果について参加者と議論を交わします。
 私たちはアゲハチョウを研究材料として、産卵刺激物質の受容機構(≒味覚刺激の受容機構)について分子レベルでの研究を進めています。昆虫の嗅覚や味覚には、膜タンパクの一種であるGPCRと、分泌タンパクであるOBPあるいはCSPが関係するらしいことが分かっていますが、GPCRの役割(主に刺激物質の受容→神経細胞の刺激)が解明されつつあるのに対して、OBPやCSPの役割は不明瞭です。OBPやCSPの役割については諸説あるのですが、これらのタンパク質は、感覚器が受け取った刺激物質をGPCRまで運ぶために存在するのではという説が主流です。
 私たちはアゲハチョウの持つGPCRやOBP、CSPを解析する中で、産卵刺激物質と1対1で対応しているのはGPCRであって、OBPやCSPは様々な産卵刺激物質を運ぶだけの脇役だと考えていました。しかしごく最近になって、私たちにとって衝撃的な論文が発表されました。ショウジョウバエを使った研究で、脇役だと思っていたOBPの性質が変わるだけで餌の好みが大きく変わることが示されたのです。
 私たちは早速その論文を取り寄せ、メンバー全員で精読し、その内容について議論を重ねました。論文の内容が刺激的かつ非常に面白かったため、私たちはこの論文を発表した研究者に会って話を聞いてみたいと思っておりました。
 その機会は、あっという間に、意外なところで訪れました。私たちは9月につくば市で開かれたアジア・太平洋化学生態学会議という国際会議に参加し、ポスターにて研究成果を発表しました。学会大会のポスター発表では、広い会場で複数の発表者がポスターを並べて掲示し、決められた時間帯に一斉にポスターの閲覧や議論を行います。私たちは蝶の味覚に関する研究が並ぶ一角でポスターを掲示したのですが、隣になぜか1つだけショウジョウバエの研究を扱ったポスターがありました。「?」と思いつつポスターを見ると、そこには何と、先日皆で読んだ「あの論文」の続きがあったのです。
 何という偶然でしょう。私たち一同は激しく驚き、また感動しました。会って話を聞いてみたかった研究者が、私たちのすぐ隣でポスター発表をしていたのです。その偶然が10月22日の外部研究者セミナーに繋がったのは、言うまでもありません。




[昆虫と植物の共進化ラボ 中 秀司]

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