ヒトを含む脊索動物門と昆虫を含む節足動物門は、地球の様々な環境に適応した、学問上極めて重要な動物門である。この二つの動物群は5億年以上前に分岐し、長い歴史の中でそれぞれ独特な進化を遂げた。脊索動物と節足動物の進化の歴史は比較的豊富な化石記録によってぼんやりとは知ることができるが、「脊索動物と節足動物がどのような動物からどのように変化して誕生したのか?」という問題に関しては、化石は何も語ってくれない。私たちはこの問題を解く手がかりを得るために、分子生物学的手法を用いた解析を現存の動物に対して行っている。それは、動物系統によって異なった変化をしながら引き継がれてきた遺伝情報の中に、脊索動物と節足動物の起源を知る手がかりを探すことができるのではないかと考えているからである。
私たちは研究に2つの方向性を持たせている。第一は、動物の進化過程で起こった「細胞の構造や機能の変化」を調べることである。第二は、動物の進化過程で起こった「発生メカニズムの変化」を調べることである。この2つの観点から動物を比較することによって、どの動物群とどの動物群の間でその変化が起こったのかを明らかにしていくのである。つまり、比較細胞生物学と比較発生生物学を行うことにより、動物の歴史の解明を目指す。
この研究の足がかりとなるデータは、平成13年9月まで在籍していた科学技術振興事業団、月田細胞軸プロジェクトに於いて、小田広樹と秋山-小田康子が中心になって行なった研究より得たものである。本報告書ではまずこれを「背景」として簡単にまとめ、引き続いて、平成13年10月1日からBRHで行った活動について報告する。 |
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