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![]() 栄養状態が悪いと多くの動物は成熟を遅らせます。例えば、ウスバカゲロウの幼虫であるアリジゴクは餌が豊富なら1年で親になるところ、餌が足りなければ2-3年かけて親になると聞きます。植物はどうでしょう。荒れ地に根を生やしてしまった植物は大きくなるのを待つのではなく、さっさと花を咲かせて種子を残す、というのが植物の戦略のようです。逆に、「肥料をやりすぎると繁るばかりでなかなか花が咲かない」というのを耳にしたことがあると思います。 種子は生化学的に不活性な休眠状態にあり、また、乾燥に耐えることができます。種子が長期間の保存に耐える所以です。生育環境が悪い場合に植物が自身の生育を諦めて、種子に種の生存を託すことができるのは、とりもなおさず、種子が乾燥耐性を持った休眠状態にあることによります。種子は次世代の幼生である胚が種皮などに包まれたものです。種子が熟して行く過程では、まず受精卵の細胞分裂と共に胚の形態形成が行われ、思いのほか早い段階で胚の形ができあがります(種子形成の初期過程)。その後、貯蔵物質の蓄積、乾燥耐性の獲得を経て、休眠状態に入ります(中・後期過程)。休眠状態にある種子はたとえ温度や水の条件が適当であっても発芽しません。四季の変化がある地方では、種子が乾燥耐性を持った休眠状態にあることは種の生存にとって有利であるに違いありません。ヒマワリの種子が秋に芽を出したのでは雪に埋もれて枯れてしまうでしょう(少なくとも札幌では)。 ところで、種子形成の初期過程を終えた胚は、適当な条件で培養してやると植物体へ成長させることができます。初期過程を終えた胚は既に次世代の幼生としてできあがっているのです。つまり、本来は一連の過程である種子形成の初期過程と発芽過程の間に種子形成の中・後期過程が割り込んでいると考えることができます。そうすると、初期過程が終わったところで胚発生を中断し、乾燥耐性の獲得や休眠状態への移行を割り込ませるためのプログラムが遺伝子に書き込まれているはずです。もし、そのプログラムが壊れたら... 図はシロイヌナズナの野生型株(左)と abi3 突然変異株(右)の種子の様子を開花後の日数を追って示したものです(黒い線は1mm)。 abi3 突然変異株では、上述のようなプログラムに変異を持つと考えられ、種子は乾燥耐性を獲得せず、休眠もしません。一方、種子をくるんでいるサヤは野生型株と同様に黄色くなって枯れていきますので、放っておくと種子も「枯れて」しまいます。この変異株で壊れた遺伝子( ABI3 遺伝子)は、種子形成の中・後期過程を制御する重要な役割を担っていると考えられます。 |
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