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![]() ゾウの体はマウスの10万倍大きい。しかし、どうしてそんなに違うのかについては現在でもほとんど解っていない。体の大きさの決定機構の解明は、非常に重要でありながら、あまり手がつけられずに残されてきた問題の一つである。 多細胞生物の個体の大きさは、個々の細胞の大きさと細胞の総数によって決まる。つまり、生物の体の大きさを決める機構には、細胞の大きさと数を決定する遺伝子がかかわってくるだろうと推測される。 線形動物門の線虫の一種であるC. エレガンスを使って、この謎の解明に取り組むことにした。C. エレガンス自身は体長1ミリ余りしかないが、近縁の回虫の体長は数十センチもあり、体積では約100万倍もの差がある。この2つは体制や発生のしかたがよく似ているが、サイズだけが大きくちがう。おそらくは、C. エレガンスにはない、体を大きくする遺伝子が、回虫のなかにはあるに違いないと考えられる。このように考えたことが、大きさの問題に興味を持ったきっかけである。 C. エレガンスには約1500種類の変異株が報告されているが、なかでも通常の野生株より体の小さな変異株が約10種類知られていた。このような小型の変異株では、体を大きくする遺伝子に変異があり、通常のサイズになれないのだろうと思われる。そして、これらの中でsma-2, 3, 4, 6 変異株の原因遺伝子はどれも細胞増殖因子TGF-β(細胞外で働くタンパク質で、細胞の増殖を促したり、分化を助けたりする信号伝達分子の1つ)と関連していることが比較的最近明かにされた。我々はこの中の1つsma-4の野生型遺伝子を野生型C. エレガンスに導入することによって、体のサイズを1.5倍以上に大きくすることができた。先に述べたようにC. エレガンスに比べて巨大である回虫の遺伝子の導入による大型化も試みている。 しかし、体の大きさの決定にかかわる遺伝子はこのようなものばかりではない。体の大きさは、体を大きくする遺伝子と小さく抑えようとする遺伝子のバランスで決まってくるに違いない。大型化を抑える遺伝子も、原理的には大型化する遺伝子と同数くらいはあるだろうと予測できる。それを見つけるには、大型化した変異株からその原因遺伝子を探すのが近道である。 生物の大型の変異株はまれで、C. エレガンスについても過去30年世界中で体が大きいことによって特徴づけられた変異株はまったく報告されていない。しかし、最近、野生型の2倍程度大きな変異株を少なくとも4種類分離することができた(写真はその1つと野生株を比較したもの)。これらがもつ変異遺伝子を現在マッピング中で、近いうちに大型化を抑える遺伝子を同定したいと考えている。また、非常におもしろいことに、大型の変異株は、平均寿命が最大2倍余り長い傾向があることもわかった。これは、体の大きさと寿命に関連がある、という興味深い可能性を提起している。大きい変異株、小さい変異株で特定の器官がどのように変化しているか、細胞の数や大きさがどのように変化しているかを知ることも重要である。そしてそのためには線虫全体の体積、各器官の大きさ、細胞の数や体積の測定といったことが必要であり、そのための技術の開発も研究の重要な部分として行っている。 これらのいろいろな研究により、体の大きさを決定している新しい遺伝子とその働く機構を明らかにしたい。 また、大型化する遺伝子と大型化する変異を、野生型の中に複数導入することによって、相乗効果で10倍以上大きいC. エレガンスを作りたい。 |
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