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発生学 遺伝学 神経科学 線虫 九州、沖縄
  線虫の体の大きさの決定機構の解析
顔写真
氏名   大島 靖美
name Ooshima Yasumi
e-mail yohshscb@mbox.nc.kyushu-u.ac.jp
住所1 九州大学大学院理学研究院生物科学部門
住所2 分子遺伝学研究室
telephone 000-0000-0000
facsimile 000-0000-0000
住所3
おおしま・やすみ/1964年に東京大学理学部生物化学科を卒業し、同大学院に進学した頃、当時世界を風靡していた分子生物学、特にJacob、Monodのオペロン説にあこがれた。そして、大学院生及び九州大学薬学部助手の時代の計約10年間、ラクトースオペロンのリプレッサーについての研究を行った。
 1973年頃から研究対象を高等生物に移すことを考え、神経系、特に記憶に興味をもって1年余り勉強したが、分子レベルで記憶の機構を解明することは当時の技術では不可能という結論に達した。この時に線虫を材料に選ぶことも考えた。結局、高等生物の発生・分化の機構を分子レベルで解明することを大きな目的として、1975年から3年間米国カーネギー研究所発生学部門に留学した。そして鈴木義昭博士(後 基生研教授)と共にカイコのフィブロイン遺伝子の転写調節機構の解析をめざして、まずフィブロイン遺伝子のクローン化と解析を行った。このクローン化は真核生物の単一コピー遺伝子のクローン化として世界で3番目のものとなったが、もっと努力すれば1番目になり、また運がよければイントロンの最初の発見につながる可能性もあったと思われる。
 帰国後、1979年に筑波大学生物科学系の助教授となり、渡米中に興味をもった核内低分子RNA(snRNA)の研究を、更にmRNAスプライシングの研究を行った。1987年に現在の研究室に移り、この頃から線虫C. エレガンスを材料として、感覚・記憶機構の解明をめざした温度走性などの行動・神経系の研究、信号伝達系の研究を行うようになった。10年ほど前から、個体の大きさの決定機構に興味を持ち、最近はその解析を中心的テーマとして研究を行っている。将来、線虫を初めとしていろいろな生物の大きさを自由に変えることができるようになると確信している
科学的に面白いことは、必ず世の中の役に立つ。
もっと詳しく知りたい方へ
スライド、この一枚
 ゾウの体はマウスの10万倍大きい。しかし、どうしてそんなに違うのかについては現在でもほとんど解っていない。体の大きさの決定機構の解明は、非常に重要でありながら、あまり手がつけられずに残されてきた問題の一つであ
 多細胞生物の個体の大きさは、個々の細胞の大きさと細胞の総数によって決まる。つまり、生物の体の大きさを決める機構には、細胞の大きさと数を決定する遺伝子がかかわってくるだろうと推測される。
 線形動物門の線虫の一種であるC. エレガンスを使って、この謎の解明に取り組むことにした。C. エレガンス自身は体長1ミリ余りしかないが、近縁の回虫の体長は数十センチもあり、体積では約100万倍もの差がある。この2つは体制や発生のしかたがよく似ているが、サイズだけが大きくちがう。おそらくは、C. エレガンスにはない、体を大きくする遺伝子が、回虫のなかにはあるに違いないと考えられる。このように考えたことが、大きさの問題に興味を持ったきっかけである。
 C. エレガンスには約1500種類の変異株が報告されているが、なかでも通常の野生株より体の小さな変異株が約10種類知られていた。このような小型の変異株では、体を大きくする遺伝子に変異があり、通常のサイズになれないのだろうと思われる。そして、これらの中でsma-2, 3, 4, 6 変異株の原因遺伝子はどれも細胞増殖因子TGF-β(細胞外で働くタンパク質で、細胞の増殖を促したり、分化を助けたりする信号伝達分子の1つ)と関連していることが比較的最近明かにされた。我々はこの中の1つsma-4の野生型遺伝子を野生型C. エレガンスに導入することによって、体のサイズを1.5倍以上に大きくすることができた。先に述べたようにC. エレガンスに比べて巨大である回虫の遺伝子の導入による大型化も試みている。
 しかし、体の大きさの決定にかかわる遺伝子はこのようなものばかりではない。体の大きさは、体を大きくする遺伝子と小さく抑えようとする遺伝子のバランスで決まってくるに違いない。大型化を抑える遺伝子も、原理的には大型化する遺伝子と同数くらいはあるだろうと予測できる。それを見つけるには、大型化した変異株からその原因遺伝子を探すのが近道である。
 生物の大型の変異株はまれで、C. エレガンスについても過去30年世界中で体が大きいことによって特徴づけられた変異株はまったく報告されていない。しかし、最近、野生型の2倍程度大きな変異株を少なくとも4種類分離することができた(写真はその1つと野生株を比較したもの)。これらがもつ変異遺伝子を現在マッピング中で、近いうちに大型化を抑える遺伝子を同定したいと考えている。また、非常におもしろいことに、大型の変異株は、平均寿命が最大2倍余り長い傾向があることもわかった。これは、体の大きさと寿命に関連がある、という興味深い可能性を提起している。大きい変異株、小さい変異株で特定の器官がどのように変化しているか、細胞の数や大きさがどのように変化しているかを知ることも重要である。そしてそのためには線虫全体の体積、各器官の大きさ、細胞の数や体積の測定といったことが必要であり、そのための技術の開発も研究の重要な部分として行っている。
 これらのいろいろな研究により、体の大きさを決定している新しい遺伝子とその働く機構を明らかにしたい。 また、大型化する遺伝子と大型化する変異を、野生型の中に複数導入することによって、相乗効果で10倍以上大きいC. エレガンスを作りたい
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