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ABO式血液型の対立遺伝子には主にA・B・Oの三種類があり、糖鎖に糖をくっつける「糖転移酵素」の遺伝子である。1990年に山本文一郎氏と箱守仙一郎氏らのグループが、A・B・O各対立遺伝子のDNA塩基配列を決定した。 ヒト以外の霊長類でもABO式血液型は存在するが、不思議な分布をしている。 チンパンジーにはB型遺伝子がなく、逆にゴリラにはA型遺伝子がない。一方、もっと人間から遠いオランウータンや旧世界猿では、A対立遺伝子とB対立遺伝子のどちらもみつかっている。このため、ABO式血液型遺伝子座では、霊長類の進化のかなり古い時代からA・B対立遺伝子が共存してきたのではないかという仮説があった。 山本文一郎氏らのグループとドイツのヤン・クラインのグループが数種類の霊長類におけるABO遺伝子の塩基配列を決定した。スライドの図は、それらの遺伝子の系統樹である(Saitou & Yamamoto,1997)。 この図から、ヒト、ゴリラ、ヒヒで見つかったB型対立遺伝子は、それぞれ独立にA型対立遺伝子から生じたことが予想される(図の朱色の枝)。つまり、ヒト、類人猿、旧世界猿の共通祖先では、ABO式血液型の共通祖先遺伝子はA対立遺伝子タイプであったと考えられる。なお、図中の数字は、各枝で塩基置換の生じた数を表わしている。この遺伝子がなぜこのような変異パターンを示すのか、まだよくわかっていないが、バクテリアやウイルスなどの感染を防ぐのに、ある程度の効果があるのではないかと考えられている。 実際、胃潰瘍や胃癌の原因のひとつであるヘリコバクター・ピロリというバクテリアは、胃壁にもぐりこむ際に、ABO式血液型物質の前駆体であるH型物質を足場にしている。するとH型物質しか持っていないO型の人間は、胃潰瘍などになりやすいため、多少は生存に不利となるだろう。 私の研究室では、ABO式血液型のこの不思議な進化パターンを解明するため、山本文一郎氏らと共同でさらに研究を進めている。 |
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