日本語版 go english
JT生命誌研究館 目次 科学者の一覧 物語マップ 検索マップ コミュニケーションルーム
進化学 遺伝学 霊長類 ヒト 中部、北陸
  生物進化を遺伝子で探る
顔写真
氏名   斎藤 成也
name Naruya saitou
e-mail nsaitou@genes.nig.ac.jp
住所1 国立遺伝学研究所 進化遺伝研究部門 斎藤研究室
住所2 〒411-8540 三島市谷田1111
telephone 0559-81-6790 
facsimile 0559-81-6789
住所3
さいとう・なるや/1957年福井県鯖江市に生まれる。1975年福井県立藤島高校卒業、同年東京大学理科II類入学。1979年同大学理学部生物学科人類学課程卒業、1981年同大学より理学修士取得。1982年~1986年、テキサス大学ヒューストン校大学院に留学し、Ph.D.を取得。日本学術振興会特別研究員、東京大学理学部生物学科助手を経て、1991年より国立遺伝学研究所進化遺伝研究部門助教授(現職)。総合研究大学院大学生命科学研究科遺伝学専攻助教授を併任している。DDBJ(日本DNAデータバンク)の活動にも参加。1996年よりMol. Biol. Evol.のAssociate Editor。単著として「遺伝子は35億年の夢を見る-バクテリアからヒトの進化まで-」(1997年、大和書房)がある。
 
 この世のすべては1回限りの「歴史」です。しかし、生命現象は宇宙のなかでも突出して歴史的な存在です。この歴史性は、とりもなおさず生物進化が与えたものであり、その根底には遺伝子の変化があります。遺伝子の物質的本体はDNA(デオキシリボ核酸)ですが、DNAというモノのなかに遺伝子という情報が蓄えられ、それが突変異によって変化してゆくことが、生物進化の中心に位置しているのです。この認識のもとに、私は生物進化を、とりわけ人類進化を遺伝子で探っています。
もっと詳しく知りたい方へ
      
スライド、この一枚

  ABO式血液型の対立遺伝子には主にA・B・Oの三種類があり、糖鎖に糖をくっつける「糖転移酵素」の遺伝子である。1990年に山本文一郎氏と箱守仙一郎氏らのグループが、A・B・O各対立遺伝子のDNA塩基配列を決定した。
 ヒト以外の霊長類でもABO式血液型は存在するが、不思議な分布をしている
 チンパンジーにはB型遺伝子がなく、逆にゴリラにはA型遺伝子がない。一方、もっと人間から遠いオランウータンや旧世界猿では、A対立遺伝子とB対立遺伝子のどちらもみつかっている。このため、ABO式血液型遺伝子座では、霊長類の進化のかなり古い時代からA・B対立遺伝子が共存してきたのではないかという仮説があった。
 山本文一郎氏らのグループとドイツのヤン・クラインのグループが数種類の霊長類におけるABO遺伝子の塩基配列を決定した。スライドの図は、それらの遺伝子の系統樹である(Saitou & Yamamoto,1997)。
 この図から、ヒト、ゴリラ、ヒヒで見つかったB型対立遺伝子は、それぞれ独立にA型対立遺伝子から生じたことが予想される(図の朱色の枝)。つまり、ヒト、類人猿、旧世界猿の共通祖先では、ABO式血液型の共通祖先遺伝子はA対立遺伝子タイプであったと考えられる。なお、図中の数字は、各枝で塩基置換の生じた数を表わしている。この遺伝子がなぜこのような変異パターンを示すのか、まだよくわかっていないが、バクテリアやウイルスなどの感染を防ぐのに、ある程度の効果があるのではないかと考えられている。
 実際、胃潰瘍や胃癌の原因のひとつであるヘリコバクター・ピロリというバクテリアは、胃壁にもぐりこむ際に、ABO式血液型物質の前駆体であるH型物質を足場にしている。するとH型物質しか持っていないO型の人間は、胃潰瘍などになりやすいため、多少は生存に不利となるだろう。
 私の研究室では、ABO式血液型のこの不思議な進化パターンを解明するため、山本文一郎氏らと共同でさらに研究を進めている。
scientists index top detail back