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生態学・行動学 動物 北海道、東北
  棲み込み関係からみた多種共存維持機構
顔写真
氏名   鈴木 孝男
name Takao Suzuki
e-mail akaos@mail.cc.tohoku.ac.jp
住所1 東北大学大学院生命科学研究科
住所2 生物学専攻動物生態学分野
telephone 000-0000-0000
facsimile 000-0000-0000
住所3
すずき・たかお/弘前大学山岳部から東北大学理学研究科に進み,現在の職を得たのが1978年。以来,趣味は山歩き,仕事は濡れ場(干潟など水に濡れるところ)で,主に生態学や環境科学に関する研究を行なっている。1991年からは,熱帯地域の海草藻場やマングローブ湿地に出かけるようになり,これまで,フィジー,オーストラリア,タイ,沖縄で調査を行なった。はじめは足が濡れる程度の場所であったが,最近ではどっぷりと水に浸かった調査を楽しんでいる。フィールド・サイエンティストとして,限られた資材や道具を工夫して調査を進めるのはとてもクリエイティブなことだと感じている。 
自然状態では,多種多様な生物がいろいろな関わり合いを持ちながら共存し続けています。どのような仕組みが,多種共存を可能にしているのでしょうか?『生物多様性の保全』を考える場合に,第一義的に必要なことは,対象となる生息場所に棲んでいる生物の実態を知ることです。同じような場所でも,そこに棲息する生物種や群集構造はそれぞれ違います。地域の固有性の積み重ねが,地球規模での生物多様性を形作っているのです。平均値的な一般 論よりも,その場その場の特殊性をとらえた個別論で,自然を見つめるようにしてほしいと思います。
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  本来,サルボオやハイガイの仲間は,潮間帯や潮下帯の砂泥底の表層近くに埋在して生活する濾過食者(Filter feeder)である。しかし,タイ国南部のアンダマン海に面した海草藻場では,サルボオの1種がウミショウブやリュウキュウスガモなどの海草に,あるいはハボウキガイに付着して生息していた。つまり,海草を付着基質(足場)として利用することで,海草藻場にまで分布を広げることに成功したといえる。波に揺れ,いずれは枯れてしまう不安定な足場ではあるが,餌条件が周囲よりも良いものと考えられる。ところで,海草の成長点は葉の基部にある。そのため,葉に付着したサルボオは,葉の成長とともに先端に移動させられ,ついには脱落してしまう。これに対処するため,サルボオは,葉の基部,葉鞘の辺りをグルグル回るように少しずつ付着位置を変えることで,定位しているのではないかと,考えている。一方,サルボオの殻の上には,フジツボを始め,多種類の固着性生物が棲みついていた。なかでもフジツボが優占しており,多い場合には20個を超える数がサルボオ1個体の殻に固着していた。フジツボは生活するのに,岩礁など,硬い固着基盤を必要とする。そのため,砂地やそこに成立する海草藻場は,普通フジツボの分布域とはならない。ところが,サルボオが海草上に棲み込んだことによって,その殻がフジツボに足場を提供することになったのである。こうして,何種類かの固着性生物が,まんまと海草藻場を生息空間として利用できるようになった。生息空間をめぐるこうした関係を,棲み込み連鎖と呼ぶ。砂地に,海草が第1次棲み込み者として入り込み,サルボオがその葉に付着することで(第2次棲み込み者),殻上が第3次棲み込み者の固着基盤となったのである。サルボオ以外にも,直接葉に付着したり,這い回ったり,葉に潜り込んだりする第2次棲み込み者も存在するし,これらを捕食するために訪れる魚やカニもいる。こうして,生物自身が提供した生息空間を他の生物が利用することで,海草藻場の多種共存が維持されているのである。
 生物による棲み場所の形成作用には,上のような『提供Provision』の他に,『創出Creation』,『条件づけConditioning』という過程が考えられている。こうした過程を経て,棲み場所の構造化が行なわれ,新たな棲み場所の追加と既存の棲み場所の拡大が,さらなる生物の棲み込みを可能にする。逆に,この過程で排除されたり,棲み込めなくなる生物もいるに違いない。でも,生物が関わらない1次空間を出発点として考えてみた時,棲み込み連鎖は,多種共存を維持し,促進する役割を果たしてきたに違いない。 個々の生物は生き長らえていくのに衣食住を必要とする。『食』は食べ物や餌であり,『住』は住環境すなわち棲息場所であり,獲物を探したり,異性と出会うために必要な空間的広がりである。『衣』は,身の安全を確保するための物や構造と考えてはどうだろうか。これには鳥の巣や巣材,底生動物の巣穴,幼魚の隠れ家,ヒトの衣類などが該当する。故に,個々の生物の集合した共存システムとしての群集は,食物連鎖を縦糸,棲み込み連鎖を横糸に,衣の確保を交えながら織り上げられた関係の総体ということができる。生態学は,この糸を解きほぐしていく学問に外ならない。
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