たちだ・ひでのり/
もともとは生物をエンジニアが機械を理解するような意味で理解したいと考えて生物学の世界に入りました。ちょうどシステム理論とか言うのがはやりのころで、この理論を使えば生物を理解できるに違いないと考えていましたが、実はシステム理論が何か、また生物学が何かも知らないでただ漠然とそう思っていただけのように思います。大学院に進んで、生物がどのように進化してきたかについての理論が有ると聴いて、その理論つまり集団遺伝学の勉強を始めてそのまま今まで研究を続けてきています。
生物の進化は集団の遺伝的構成が変化することによって起こりますが、この過程には二つの側面が有ります。一つはどのような遺伝的変化が遺伝子に起こるかという問題(突然変異)、もう一つはこの変異が集団の中でどのように広がり生物種の違いを産み出していくかという問題(遺伝子頻度変化)です。集団遺伝学は後者の側面について研究します。具体的には、0)突然変異も含めた遺伝様式が与えられた時、1)それぞれの遺伝子型の適応度、2)集団構造(集団の大きさや地理的構造など)が遺伝子頻度の時間的変化にどのように影響を及ぼすかを調べます。0)は遺伝学の知識に基づいて決めますが、1)や2)はわからないことが多いので、1)、2)を適当に仮定してモデルを作り、その予測と実際のデータを較べることによって、逆に1)、2)に関する推測を行います。このような立場から、現在次の二つのテーマを中心に研究をしています。
1.「分子進化のほぼ中立モデル」の検討
DNA塩基あるいはアミノ酸レベルの進化に、非常に弱い自然淘汰と遺伝的浮動が働いているという説(遺伝研の太田朋子博士により提唱された)を、理論・データ解析の両面から調べています。植物(スギ科樹木、フタバガキなどの熱帯林樹木、ヌスビトハギなど)の塩基配列データを主に解析しています。
2.多重遺伝子族の進化
遺伝子重複とそれに続く多様化による異なる機能を持った遺伝子の出現は、生物進化の中で非常に重要な役割を果たしたと考えられます。多重遺伝子族の進化が、どのような条件のものとでどのようなスピードで起こるのかを理論的に解析しています(スライド参照)。
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