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近年、DNA修復分野の研究は大きな広がりを見せており、遺伝情報維持機構についての重要性が広く認識されるようになっている。生きとし生ける全ての生物の細胞の内部で、DNAに出来た損傷を修復するシステムは、遺伝情報を安定に維持するために機能し続けている。実際の所生物は、放射線や発ガン物質のような環境変異原にさらされることによってだけでなく、自然の状態で存在しているだけでもDNAに傷が出来ている。DNA修復機構が十分に機能しないと、あるいはその生物が持っている修復能力以上のDNA損傷が出来ると、細胞は死んだり、たとえ死ななくても突然変異やガンを生じる。生物のDNA修復機構を明らかにすることは従って、ガンや突然変異あるいは進化の道筋を理解することにもつながっている。 放射線に対して超耐性の細菌D. radioduransは、ヒトの培養細胞や大腸菌の場合、30グレイの放射線が致死線量であるのにたいし、5,000グレイ照射しても全く死なない。30グレイの放射線は大腸菌染色体に平均1.2個のDNA2本鎖切断を作り、5,000グレイはD. radiodurans染色体に200個の2本鎖切断を作る。つまり、大腸菌は1~2個の2本鎖切断を修復することができないが、ラジオデュランスは200個の2本鎖切断を4~5時間以内に修復する能力を持っていることになる。この仕組みを科学的に説明することができると、DNA修復の全貌を明らかにすることにつながると期待できる。ちなみに、グレイ(Gray)は生体などが受けた放射線の量の単位で、新聞などに記載されている一般人の年間被ばくの限度(1ミリシーベルト)は、放射線の種類などを無視して概算すると0.001グレイに相当する。 |
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