1. トップ
  2. 季刊「生命誌」
  3. 季刊「生命誌」8号
  4. BRHサロン 飽食と「人類のカレンダー」

BRHサロン

飽食と「人類のカレンダー」

鈴木裕也

食物が豊富になり、健康人の標準体重が以前より10%増加した。成人病患者は医師から減量を命ぜられ、しおらしく「はい、すみません。頑張ります」と頭を下げる。しかし、そう簡単にダイエットなどできるものではない。なぜなら、人類の歴史のほとんどは飢餓との戦いの連続であり、飽食の時代など最近の一瞬の出来事だからだ。ためしに、カール・セーガンにならい、人類が地球上に現れたときを1月1日、現在を翌年の1月1日午前0時として、人類の歴史を1年間のカレンダーに圧縮してみた。

ご覧のとおり、人類が登場してから500万年、つい今しがたまで飢えとの戦いの繰り返しであった。その間人類は、食物があるうちに脂肪として蓄える術を身につけ、生き延びてきた。その最高傑作が現代人である。戦後の飽食の時代が始まったのは大晦日の23時56分51秒。このような歴史をもった人類(現代人)が簡単にダイエットに成功するはずなどないではないか。
 

(すずき・ゆたか/社会保険埼玉中央病院副院長)

※所属などはすべて季刊「生命誌」掲載当時の情報です。

季刊「生命誌」をもっとみる

オンライン開催 催しのご案内

レクチャー

4/20(土)14:00〜

オサムシからイチジクとイチジクコバチ