季刊誌「生命誌」通巻27号
骨と形-骨ってこんなに変わるもの?:目次 > 背骨はどうやってできる? 体節が作る分節構造:青山裕彦
骨と形 骨ってこんなに変わるもの?
背骨はどうやってできる? 体節が作る分節構造:青山裕彦
JT生命誌研究館では、1999年10月から2001年3月まで
「生き物を透かしてみたら・・・・・・・骨と形---骨ってこんなに変わるもの?」展を行っています。
これは、BRHの青山裕彦研究員の研究(肋骨はどうして胸にだけあるのか?という問題を中心に、ニワトリとウズラを使って調べています)を基本として企画しました。

骨は人間を含む脊椎動物の体を支えるものとして古くから研究されてきました。
でも今回は、骨を「形を決めるもの」という切り口で見て、脊椎動物の進化と個体発生を関係づけながら整理し、展示を作りました。

この展示の面白さをみなさんに伝えたいと思い、『生命誌』誌上で展示見学ツアーを試みます。
展示を眺めるように、ページをめくって、脊椎動物の骨格の進化と個体発生をたどってみてください。
さまざまな生物の実物の骨格標本や発生標本を比べると面白い。
このあとはぜひ、生命誌研究館にお越しくださって、実際の展示をお楽しみください。
専門家も小さなお子さんも楽しめます。
背骨はどうやってできる? 体節が作る分節構造
 背骨に見られる繰り返し構造からわかるように、私たちの体も昆虫と同じように節からなっている。脊椎動物の分節構造を作るもとになっているのが「体節」である。体節は直径0.1mmくらいの球形の組織で、発生の初期にはビーズが連なったように見える。
 一つ一つの体節は、一見同じ形をしているが、胸の体節だけに肋骨を作る能力があり、頸や腰の体節にはその能力はないのだろうか?また体節になる前、そのもととなる組織ではどうなのだろうか?それを調べるためにこんな実験をした。そのまま発生が進めば胸で肋骨を作るはずの体節やその前駆組織を腰の部分に移植したのある。この段階ですでに肋骨を作る能力があれば、腰でも肋骨を作るはずだ。移植後1週間、腰に肋骨ができた!この実験から、体節はその発生のもっとも若い時期から将来どのような形の骨を作るかが決まっていることがわかった。
 体節は、自分自身の形を決めるだけではない。その隣にある神経組織に働きかけて、神経節や神経の形成も支配する。肋間神経痛の痛みからわかるようにちょうど肋骨に沿って走っているが、これも体節がそう仕向けるのである。
 ところで、体節は周りが何と言おうと自分の運命を貫き通すかというと、必ずしもそうではない。頭のほうにある体節のいくつかは頭蓋骨の一部(後頭骨)になるが、その骨は背骨と違って分節していない。ところが最近、イスラエルの研究者が、頭の体節を頸部に移植すると分節した骨を作ることを発見した。ただし、頸部の特徴である椎骨の突起はなく、後頭骨の、脊髄を取り囲む部分だけができる。後頭骨を作るには、体節自身の能力に加えて、頭部の環境も必要なのだ。逆に言えば、頭の体節がまかり間違って頸におりてきたとしても、頭が曲がらなくなるようなことはないということだ。環境とのかね合いが安全装置としてはたらくのである。
 生き物の体をつくり上げるのは、どうも重層的な保証構造をもった、剛直すぎもせず、融通しすぎることもない系であるらしい。


INDEX
  骨と形 骨ってこんなに変わるもの?:工藤光子+青山裕彦+倉谷滋
脊椎動物の基本型 背骨を通して進化をみる:青山裕彦
アゴも繰り返しパターンから ヤツメウナギと私:倉谷 滋
肋骨は何をしている? カメの甲羅も肋骨:青山裕彦
Special Story