生命誌ジャーナル 2006年春号
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光合成蛋白質の形から知る植物の賢さ
東京大学大学院総合文化研究科 栗栖源嗣
  (1) 違いがありながら似ている光合成と酸素呼吸
(2) 分子を見て初めて分かったこと
(3) 植物ならではのやりくり
 光合成蛋白質シトクロムb6f複合体は巨大な膜蛋白質で構造解析が難しいとされていたのだが、ラン藻から単離して立体構造を明らかにした。すると、驚いたことに分光学的研究で予想されていた2つのb型ヘム以外に3つめのヘムが見つかった。既に立体構造が分かっている呼吸鎖シトクロムbc1複合体にはないものだ。これを"ヘムx"と名付けて調べた。
 ヘムxがなくとも光合成反応は進む。これは葉緑体にありながら糖の合成ではなく、ATPを優先的に手に入れる経路に関わっているらしいのである。植物やラン藻は塩濃度が高いなどの暮らしにくい環境では、それに打ち勝つためのエネルギー、つまりATPが必要となる。動物と違って環境が悪化しても逃げられない植物は、ヘムxを使ってATPを優先的につくることになったのではないだろうか。環境や生き方の違いに対応するために、新しいものを生み出すのでなく、エネルギー生産という生きる基本に関わる蛋白質(シトクロム)にまで工夫を加えているのがいかにも生きものらしい。X線結晶構造解析で蛋白質をみなければ分からなかった予想外の発見である。
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