生物がこれだけ多様であるのに、全ての生きものがもつ遺伝情報システムが共通していることは、進化が実際に起きたことを示す最大の証拠だろう。しかし、“どのように進化が起きたか”、すなわち進化の機構を科学で証明するのは難しい。歴史性のある一回性の現象(宇宙の起源等も同じ)を扱うには、従来の科学がもつ“実験による再現性を基にした枠組み”とは別の思考の枠組みが必要とされるのである。ここで、“生物のもつゲノムのはたらき、つまり機能がその生物を特徴づけている”という考え方をするなら、“進化は新しいゲノム機能の獲得によって起きる”という進化に対する新しいアプローチが見えてくる。すなわち、ある一群の生物に特徴的に見られるゲノム機能がどのように獲得されたかを知ることが、進化機構を知る上での鍵にちがいない。幸いその証拠がゲノムに残されている場合には、“ゲノムに残された新しい構造と機能の関係”の解析により、進化という歴史性のある課題も科学的検証が可能になるはずだ。
ホ乳類に特有なゲノム機能である「ゲノムインプリンティング」は、ヒトを含むホ乳類の個体発生に必須である。本稿では、はじめにこの現象の生物学的意義を考察し、それに基づいた進化機構研究へのアプローチを紹介する。ヘッケルの有名な命題“個体発生は系統発生を繰り返す”は今では間違っていることが判っているが、“ゲノム構造の変化とゲノム機能の獲得”を調べることで、個体発生と系統発生を結ぶ新たな関係が見えてくるだろう。 |
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