1. トップ
  2. 研究活動
  3. DNAから進化を探る

DNAから進化を探る系統進化研究室ー 蘇 智慧

進化研究の原点は観察と比較です。分子レベルの比較、表現型の比較、そして分子から表現型に至る過程の比較を通して、進化・種分化のきっかけとメカニズムを探ります。

イチジク属植物を中心とした生物の相互作用と種分化機構を探る

生物間の相互作用は種多様性を生み出す大きな原動力の一つです。昆虫と植物は相互適応的な関係を築くことによって多様性が促されてきたと考えられています。その顕著な例がイチジク属植物とイチジクコバチの共生系です(右図)。我々は分子系統、集団遺伝、生態・形態観察、遺伝子発現とゲノム比較などさまざまな側面からイチジク属植物を中心とする生物種間の共生関係の構築、維持機構、および進化、種分化のメカニズムについて解明を行っています。

オサムシの後翅退化のメカニズムを探る

昆虫類は地球上で最も多様化した動物群です。その多様性をもたらしたさまざまな要因の中でも翅の獲得は昆虫の進化・多様化の過程において最重要なイベントです。しかし、現生の昆虫類では逆に翅をなくしたものも少なくありません。翅の退化も種の多様性を促進していると考えられています。つまり、翅の獲得と退化はどちらも昆虫の種多様性に寄与している、実に興味深い現象です。オサムシ(亜科)は後翅を退化して飛べなくなった代表的昆虫群です(右図)。我々はこれまでにオサムシをはじめ、昆虫類の系統と進化について研究を行ってきました。昆虫類で広く見られる翅退化の進化的現象を理解するために、現在オサムシの後翅退化のメカニズムの解明を目指しています。

年度別活動報告

これまでの学位取得者とテーマ

  • 平成30年度 修士論文 呉恵子 「島嶼におけるイチジクコバチ4種の集団遺伝構造の解明」
  • 平成29年度 修士論文 星野朱音 「島嶼群におけるイチジク属植物の集団遺伝構造」
  • 平成27年度 修士論文 南 紘彰 「トランスクリプトーム情報を用いた多足亜門の系統解析」
  • 平成25年度 博士論文 宮澤秀幸 「核遺伝子による系統解析とこれに基づく多足亜門の進化」
  • 平成22年度 修士論文 上田千晶 「タンパク質をコードする核遺伝子による鋏角類の系統解析」
  • 平成22年度 修士論文 長久保麻子 「内顎綱は単系統か? 核遺伝子による無翅昆虫類の分子系統解析」
  • 平成22年度 修士論文 坂内和洋 「メキシコ産イチジク属植物とイチジクコバチの分子系統解析」
  • 平成22年度 博士論文 石渡啓介 「タンパク質をコードする核遺伝子による昆虫類の系統関係の解明」
  • 平成20年度 修士論文 魚住太郎 「複数の核遺伝子による鰓脚類の系統解析」
  • 平成13年度 修士論文 飯野 均 「メキシコ産イチジクコバチの分子系統関係」

このラボから生まれた季刊「生命誌」

季刊「生命誌」100号
リサーチ:生命誌研究のこれまでと今

研究者は日々、何を見て、何に驚き、何を想うのか。論文には書かれない、今まさに動いている研究の日常を語りました。

季刊「生命誌」83号
フロム BRH:生きもの愛づる人びとの物語り3

研究と表現の両輪による活動を続けて20年、明確なまとまりが見えてきました。これをどのように生かし、どう展開するか。次の10年に向けて考えています。

季刊「生命誌」64号
クロス:「多様な生きものが続いていくには?」

生きものにとって海は障壁です。小笠原諸島固有のイチジク属植物や世界中に分布するグンバイヒルガオの海を渡る戦略から、多様な生きものが続いていく工夫が見えてきます。

季刊「生命誌」63号
クロス:「上陸の道のりを探る2つの眼差し」

現在、地球上で最も繁栄している動物群である昆虫類は、今から4億年ほど前に水中から陸上に進出した後、一気に多様化したと考えられています。昆虫進化の全体像が胚発生と分子進化という2つの研究の重なりから見えてきました。

季刊「生命誌」60号
from BRH:「生きもの上陸大作戦 - 昆虫の起源と進化を明らかにする」

生命体が暮らしやすい海を離れ、過酷な環境である陸地へと進出したのは今から5~3億年前。最初は植物、続いて昆虫が上陸しました。最初に陸上進出した昆虫の祖先は何か。DNAの系統関係から起源を探ります。

季刊「生命誌」58号
from BRH:「植物の進化の道のりを見渡す」- 多様な植物に見る遺伝子のやりくり」

生物の多様な遺伝子のほとんどは、既存の遺伝子の重複や、遺伝子間のドメイン交換によって生まれたものです。多細胞動物に特有な遺伝子族に注目し、陸上植物への進化を読み解く手がかりを藻類に求め研究しています。

季刊「生命誌」50号
リサーチ:「昆虫と植物が作る生態系の基盤」

陸上で最も多様性を誇る動物群である昆虫は、植物と関わり合って生態系の基盤を作っていきます。昆虫や植物のDNAから生きものの進化の物語を読み解き、生態系が生まれてきた過程を知ろうとしています。

季刊「生命誌」39号
「飼育・採集日記」

中国の最南端に位置しハワイと同緯度にある海南島へ、イチジクとイチジクコバチの1種対1種の共進化の手掛かりを得るために採集に出かけました。

季刊「生命誌」32号
「花とゆりかごと空飛ぶ花粉 - イチジクとイチジクコバチの共進化」

世界中に750種もあるイチジクには、それぞれ送紛者となるイチジクコバチがいます。それぞれの系統関係をDNAから探るために、生命誌研究館では外部の研究者やアマチュアの方たちと連携して世界中からサンプルを集め解析しています。

季刊「生命誌」28号
「オサムシから進化を語る」

7年にわたる生命誌研究館のオサムシ研究が終了しました。小さなオサムシのDNAを調べることで、形だけではわからなかった進化の道筋が明らかになり、一斉放散や平行進化といった新たな進化の見方も生まれました。

[系統進化研究室]研究室サイト 論文・研究日誌など、研究者向け情報を日々更新中