動物を、頭と胴体、四肢に分けて考えると、その成り立ちにはそれぞれのストーリーがある。ここでは、胴体を形作る背骨と肋骨に、その変化の現れを見てみよう。背骨は、よく似た小さな骨---椎骨がひとつながりに連なったものであり、一つ一つの椎骨に対して肋骨がある。
哺乳類の直接の祖先は、頸部も含めて、胴体全体に肋骨をもっていた。ところが現生哺乳類では、胸にだけ肋骨があり、腹側では胸骨と、背側では背骨と連結して頑丈な胸を作っている。ヒトの場合、胸には12個の椎骨とその一つ一つに対応する12対の肋骨がある。頸や腰には肋骨はないように見えるが、それぞれの椎骨に小さな突起がある。頸や腰では、肋骨が短くなった。あるいは、胸では、肋骨が長くなったと言えるのだ。この進化の過程でヒトは何を得たのだろうか。
ヒトの肋骨は、棒状のものが並ぶことで、日本の鎧のように剛性と柔軟性を兼ね備えた胸郭を作っている。肋骨自体は硬いが、その運動にある程度の自由度があるので、筋肉の作用で引き上げられ、胸部を拡げる運動ができる。胸部が拡がると、胸郭内の気圧が下がり、その内部に収まる肺がふくらんで外の空気が流れ込む。
一方、腹壁には肋骨がなく、まったく柔軟なので、胸部の下部に蓋をしている横隔膜を上下させることができる。いわゆる腹式呼吸である。つまり、ヒトは、肋骨が胸にしかないということを利用して、活発な呼吸運動を行っているのである。
カメの場合はどうだろう。カメの肋骨は、その象徴ともいえる背中の甲羅である。孵化するまでは普通の肋骨のように見える(ただし真皮の中にまでしっかりと埋まってはいるが)。その後、真皮中にできてくる別の骨と一体になって、扁平な肋骨となり、さらに前後に隣り合うもの同士がしっかりとかみ合う構造を作り、全体が一枚の板になるのである。この骨でできた板の上をさらに表皮の変化した硬い板が覆い、甲羅ができあがる。
カメの肋骨は、このように自由度を失ったので、肋骨の運動による呼吸は期待できない。活発な呼吸を犠牲にして、代わりに自分の身を守る頑丈な装甲を得たのである。こうしてカメはゆっくりと動く動物の代表になった。
同じ肋骨でも、その形が変わるとまったく異なる機能を果たすようになるのである。,/
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