中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子がその時思うことを書き込みます。月二回のペースで、1995年5月から更新を続けています。

2016年2月1日

夢を持ち続けること

中村桂子

嬉しいことがありました。古くからのお友だちである韓国のアーティスト崔在銀さんの壮大なプロジェクト「Dreams of Earth」が五月に開催されるヴェネツィア・建築ビエンナーレの国際館での展示に選ばれたのです。このプロジェクトは、朝鮮半島の三八度線を挟んで60年間存在する幅2kmの境界線を越えて竹の橋をかけるというまさに「夢」を現実として描いたものです。鉄条網で囲まれたこの地域は、人がまったく立ち入らなかったために、地球上で最もすばらしいと言ってもよい生態系ができ上っています。もっとも、そこは数百万個の地雷が埋まっている場所でもあるわけです。南と北をつなぐ方法を橋にしたのは、この地域に人間が入って生態系を壊さないためであり、また地雷を踏まないためでもあります。橋の両側にはここにしかいない絶滅危惧種を守るための「Seeds Bank」や生きもの研究の施設を計画しています。

このプロジェクトが興味深いのは、国際情勢を考えたらこんなことはできないだろうとか、経済的にどうかなどということは一切考えずにみごとな生態系を生かすということだけに終始していることです。いつできるかということさえ抜きに素直に提案していることです。独特の発想に驚いたら、「原点は生命誌」と言われてちょっと緊張しました。

それが建築ビエンナーレに招かれたというのですからすばらしい!権力と武力の中での行動を考えることを現実的とし、そんな夢みたいなこととバカにするのが今の社会かと思っていたらそうでもないのかもしれません。

プロジェクトのことは「季刊生命誌」の86号のトーク「距離と尊重をもって自然に接する」で語り合っています。読んで下さい。

みなさんからのご意見生命誌の広場より

夢の橋

投稿日:2016.02.03 / 名前:岡野桂子

崔さんのプロジェクトのニュースは本当にうれしいニュースでした。自然の中の生きものとしての視線。国際情勢や経済、人間の大人が作り上げた人間社会にどっぷり浸かっていると、失いがちな視線。子供の夢と映るのでしょうか。38度線が睨み合いの場所ではなく、生きものがその生命をはぐくむことができる地球のすばらしさを教えてくれる場所となれば、そこはきっと世界のみんなの宝物になるのではないでしょうか。自然としても文化としても。夢を実現可能なかたちとし現実の中に組み込んでいく仕事、大人が真剣に取り組み子供たちに残せるとしたらどんなにいいだろう。どのように応援していいかわかりませんが、とにかく応援してます。

語り合いの続きは「生命誌の広場」へ

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