中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子がその時思うことを書き込みます。月二回のペースで、1995年5月から更新を続けています。

2013年5月15日

生きもの感覚が戸惑っています

中村桂子

例年、ゴールデンウィークの仕事は衣更えです。冬のコートや厚ぼったい服をしまい、初夏へ向けてのものを出す作業をしながら、四季のある面倒さを思います。日本のよいところをあげなさいと言われれば、まっさきに四季があることと言うに違いないのに、この時ばかりは一年中同じ季節なら楽だろうにと怠け心が出ます。ところで今年は、冬の服をしまって大丈夫かしらと迷い、徹底した作業ができませんでした。片つけ物をしながら聞いていたラジオが北海道では雪が降っていますと言い、東京でも季節には合わない冷たい北風が吹いていたからです。

そして連休明けの出勤です。五月という意識で少し薄手のものを着て出ましたが、朝の風は寒さを感じさせました。京都の街角でバスを待つお仲間三人を見ると、一人は合服、一人はチェック柄のスポーツシャツ、そしてもう一人は厚手の背広の中にセーターを着てウールのマフラーを首に巻いていました。季節感で言うと、最後の一人はなんともおかしく気になりましたが、寒がりの人だったらこうなるかなと思える気温でもありました。

日常は、体での判断でいくのを原則にしています。お料理は、すべて舌に頼ります。醤油大さじ一とか、塩小さじ一とかいうところもおおよそこんなものとやって味見です。すべてこれでやってきましたが、最近この判断が難しくなってきているのを感じます。

一つは、機械が数字を教えてくれることです。お湯の温度はポットもお風呂も表示があります。舌や手で温度を確かめる必要がありません。もう一つは、最近の気温のように振れが大きすぎて常識では予測ができず、お手上げという場合です。天気予報で今日の最高気温は二十八度と言っています。昨日とは十度も違う気温を予測するのは難しいことです。

生きもの感覚という言葉を使い、これを生かして暮らそうとしてきましたが、花の咲き方などを見ていると、生きもの感覚優等生のはずの植物が困っているように見える最近の気候です。これでは私が悩むのはしかたのないことかなと思いながら、自然が少し荒っぽくなっているようで気になっています。

付記:本文を書いた連休明けの戸惑いなどなんのその、この季節に30度を越す暑さです。少しでなくかなり荒っぽいですね(5/14)。

みなさんからのご意見生命誌の広場より

四方から中心に向かって凝集する―科学は生き物としてのイメージに行き着くかどうか

投稿日:2013.05.19 / ニックネーム:hon no mushi

失態してしまいましたが…しったい…屍態…死。それは人間に限らず全ての生物を構成要素に分解し、物質的に探究するには避けられないのでしょうか…近代から現代にかけては有り余る環境資源から取り敢えず何でもかんでも取ってきて試してみる、という時代だったのではないかと思いますけど、例えば石油のもとになったのはどんな生物たちでどれくらいの量が積み重なってできたのかは「置いておいて」、使えるものはさっさと使ってしまう。そしてその奪取は帝国主義や戦争をともなっていて、『クライシス・キャラバン』には捨て台詞のように「戦争(WAR)とは…Waste All Resources」とありましたが、身近な所でおやつにお饅頭を頂くとしてそれがどこからどうやって出来てくるのか…知らない…のと、土饅頭が並んでいてもそこでかつて何があったのか…ということにほとんどの人は想いを寄せはしない…のは何だか似ているように思います。
…今、『エイブリー教授とDNA』という本を見ていて、「エイブリーは…科学の細分化の問題に触れ、その危険性を指摘して、異なる領域の連帯、学際的研究の必要性を強調し…(聴衆は細菌の形質転換の話を期待したけれども、彼は)未来に期待する研究について語り」…とあったのですが、それは細かい部分がわかってもそれは元々生き物の体で物質の流れのなかにあるはずなのだから、そもそもの出処、生き物達の世界を忘れてはいけない…と仄めかしているようでした。…外側の化石のような死の世界から、中心の、生きている者たちの(一瞬雨上がりの水溜り場のように見えたりもした)世界へと凝集する感じを受ける生命誌マンダラに、ふと近い何かを読み取りました…でも水溜りというより深みのある水球といった感じかも…またさらにレンズのような感じもして、見ている者をも取り込んで見返してくるような、距離と時間が伸びたり縮んだりするような…

語り合いの続きは「生命誌の広場」へ

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