中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子がその時思うことを書き込みます。月二回のペースで、1995年5月から更新を続けています。

2014年11月17日

役に立つ

中村桂子

テレビで漆器づくりの現場を紹介していました。何度も何度も塗りと削りを重ねてでき上がり。でもこれが完成ではないと、でき立てのお椀を3年使ったものと並べて見せてくれました。つやがまったく違います。使って、拭いてをくり返しているうちにしっとりしたつやが出てくるのですね。

このような日用品として生れてきた工芸が大好きです。毎年、日本伝統工芸展に出品される作品は、徹底的に技を伝承しながら、作者の個性を出した美しいものになっているところがなんとも魅力的で引き込まれます。もちろん技にも新らしさを加えています。全体の技のあり方は受け継ぎながら独自のものを出していくところがとても生きものっぽくてそれも好きです。陶器、漆、木や竹の細工、金工、染織など実用品であるところが魅力の基本です。

役に立つ。飾って眺める美術品と違って、使えなければ意味がありません。役に立つという面があるための美しさです。漆器づくりを見ながら最近科学のまわりで「役に立つ」という言葉が品なく使われていて可哀想な気がしてきました。「役に立つ」の品をとり戻したいと思います。

今開かれている正倉院展の御物も皆使われていたものですよね。昔は高貴な方のものでしかなかったわけですが、今は私たちも、心がければ美しいものに出会えます。高額のものでなくても、身の丈に合った形で、役に立つと美しさを重ね合わせられるようにしたいものです。もちろん科学の世界でも。

みなさんからのご意見生命誌の広場より

『生物学個人授業』との出会い

投稿日:2014.11.04 / 名前:杉山昭夫

最近、「生物多様性」ということばをマスコミで見たり聞いたりすることがことがほとんどありません。たぶん、2012年に名古屋で行われた生物多様性の国際会議の前後にマスコミ等で多く取り上げられそれが記憶に残っているのかもしれません。そういう私ですが、この秋「生物多様性」ということばに出会いました。それは、『生物学個人授業』という岡田節人先生と南伸坊さんの書かれた本の中でです。この本を手にとったのは、昨秋中村先生にお会いした際、岡田先生に館長をお願いした経緯を伺っていたこともあり岡田先生に関心を持っていたからでした。『生き物が見る私たち』同様に難しい問題を扱っているにもかかわらず、最後までおもしろく読むことができました。それと、この本の中で岡田先生が中村先生を「盟友」と呼ばれていて、その信頼の深さに心打たれました。中村先生が書かれているように、「ことばの意味を知識として持つ」ことよりも、いろいろいる生きものを身近に感じられるようにすること」は岡田先生のお考えと同じであり、私も同感です。教員経験者として、自然が多くある地域に住んでいても、生きものを身近に感じられない子供たちが増えてきました。だからこそ教員は生きものを身近に感じる感性を大事にしてほしいと思います。「学力テスト」の点数公表が続く限り、平均点より高い低いを比較し、点数を追い求め続いているのが現実ですが。長くなり申し訳ありません。生命誌版人形劇「セロ弾きのゴーシュ」が12月に札幌で公演されるとのこと。ぜひ東北でも公演をと願っています。様々な経験をした東北の人々は、きっと深いところでこの人形劇を理解してくれるのではないでしょうか。

語り合いの続きは「生命誌の広場」へ

中村桂子のちょっと一言バックナンバー

  • 2014年
  • 2013年
  • 2012年
  • 2011年
  • 2010年
  • 2009年
  • 2008年
  • 2007年
  • 2006年
  • 2005年
  • 2004年
  • 2003年
  • 2002年
  • 2001年
  • 2000年
  • 1999年
  • 1998年
  • 催しへ行こう
  • 生命誌の広場

ページの先頭へ