指導教官の宮地伝三郎先生に下宿に近い嵐山のサルを見てこいと言われ、観察を始めました。サルは初めてです。これは面白いと思って観察の結果を先輩に報告すると、そんなのオレがとっくに見ていると片っ端から言われ、意気消沈する毎日でした。
2年目には、高崎山に行くように言われました。今西先生や伊谷さんが、九州の幸島や高崎山で、餌付けによって至近距離からの詳細な観察を可能にし、個体識別をしたうえで長期間継続調査するという独特の方法を確立、ニホンザルに社会構造があることを報告して、海外でも高い評価を得始めていました。ボスザルを筆頭にした個体間の順位の存在、サルに文化があるかもしれないという疑問を投げかけた「芋洗い」の発見など、サル学の新しい時代をつくっていたのです。
もっとも、それは伊谷さんの『高崎山のサル』にたいてい書かれていましたから、同じものを見ても新しい発見があるとは思えない。餌付け場所以外の自然状態ではサルがどういう生活をしているかを見直してみようと思い、山の中のサルを追って歩きました。600mの高低差を一日に2 往復するようながむしゃらなフィールドワークで、こんなことをしていて研究になるのだろうかと思うこともたびたびでしたが、サルを追いかけているうちに、リーダーがいて順位のある統制のとれた集団が分裂していく経過を観察できたのです。
「高崎山の群れの分裂」として発表、これが私の最初の論文で、集団の分裂過程を追跡した世界で最初の事例になりました。とはいえ発表当時は、数が増えたから分裂しただけとしか見られず、あまり評価されませんでした。でも、私にとっては、社会構造を理解するには壊れる時を見るのが安定時の追跡と同じくらい大事なポイントだと気づくことができたわけで、大きな収穫でした。その後インドでは、積極的に社会変動の起きそうな場面を探して回り、時には実験的に社会変動を起こしてしまうという方法の下敷きになったのです。個体識別をして長期にわたって観察するのが、日本のサル学の独特な方法だったのですが、それに一つ新しい視点を付け加えたわけです。 |
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| 霊長類の分類 |
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霊長類は哺乳綱の中の肉食類や偶蹄類、齧歯類などと並ぶ目(もく)で、真猿と原猿に分かれる。原猿は霊長類の祖先種に近いといわれ、キツネザルなど、いわゆるサルらしくないサルである。
真猿は、中南米に生息する広鼻猿類(オマキザル、ホエザルなど)とアジア・アフリカに分布する狭鼻猿類に分かれ、狭鼻猿類にはオナガザルやニホンザル、ハヌマン・ラングールなどを含むオナガザル上科とヒト上科があり、ヒト上科にはオランウータン、チンパンジー、ゴリラ、テナガザルを含む類人猿とヒトが入る。最近では、チンパンジーをヒト科に入れることもある。
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