問いを発掘

チョウと植物の
関係はどのように?

さまざまなチョウと植物の結びつきは、
長い進化の歴史の中で、どのようにつくられてきたのでしょうか。研究者のアイデアを見てみましょう。

進化を考える

「昆虫食性進化研究室」は、植物の葉に含まれる化合物を手がかりに、アゲハチョウの仲間の進化を調べています。

世界に2万種ほどと言われるチョウは、およそ1億年前にひとつの祖先種から分かれてきました。一方、食草となる植物も長い時間をかけて多様化し、チョウの進化は植物の進化とともにありました。

アゲハチョウの仲間のうち一番祖先種に近いのがジャコウアゲハと言われます。ジャコウアゲハの祖先の中にクスノキを食べるアオスジアゲハが現れ、そこから次々と食草を変えては分かれるをくりかえして、多様な種が生まれました。この過程から、チョウと植物は「共進化」したと考えられています。

しかし、チョウと食草の分子系統樹を重ねてみると、両者の間に関係性が見られなかったのです。植物は植物の都合で、チョウはチョウの都合で、それぞれに独立に進化したということです。では、チョウと植物の関係を結ぶカギは、いったい何でしょう?

実は、チョウと植物化合物の間に関係があることがわかりました。下の図を見てみましょう。

チョウは化合物が類似した植物を
利用しているのではないか?
と研究者の尾崎さんは考えています。

進化の過程を示したチョウの分子系統樹と、植物化合物の種類の間に関係があることがわかりました。シジミチョウ科は、マメ科の植物化合物を利用し、シロチョウ科はアブラナ科を、アゲハチョウ科はミカン科をそれぞれ利用していますね。その一方で、植物化合物の分類で植物を並べると、進化の過程を示す系統樹をつくることができません。チョウと植物が「共進化」したのではなく、チョウが植物化合物を手がかりに、ただ食草を選んできたのではないか、と研究者の尾崎さんは考えています。