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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【脳って何?】

2004.8.15 

中村桂子館長
 唯今夏休み中。と言っても、東京に一週間いるというだけで結局その間に東京での仕事を入れているものですから、まとまった時間はとれず、積み残しの仕事片づけ週間になってしまいそうです。それにこのあたりは、ちっとも雨が降らないので、今日も早起きして水まきです。などと言っているとつまらなくなりそうなので、文句を言わずに一週間を楽しみむことにします。そこで、“ちょっと一言”も、もう一回外で書いたものを使おうという算段です。今回は、京都新聞。実は、これは夏休み特集で、アインシュタインの脳に始まって脳のはたらきに関する新しい考え方を紹介しました。まずそれを読んで下さい(2004年7月30日 京都新聞・夕刊「現代のことば」>>)。ところで私自身も夏休みに入ったので、この考えをさらにエスカレートさせて、仮説をたてています。脳の研究者は皆、神経細胞にばかり眼を向けているけれど、実は臓器としての脳を作っているのはグリア細胞です。そこで、コンピュータネットワークにたとえるなら神経細胞はまさにネットワークそのもので、コンテンツは主にグリア細胞の方にあるのではなかろうかと考えた次第。徹底的に調べ上げた上でたてた仮説ではなく直感と遊びですが、ほんの少しは本気の部分もあり、これから調べようと思っています。ゲノムと脳は、生命、人間を考える切り口としてとても興味深いもので、研究も進んでいますが、本質を知るには、まだまだわからないことだらけ。でも少し垣間見えるというあたりが一番楽しいのかもしれません。共に考えるべき素材にはこと欠きません。ところが、ゲノムも脳も「社会に役立てよう」という意識の強い人たちがあまりにも早急に医療や教育を語りすぎています。社会も早く結果を出せと期待している。これでよいのかと気になります。本当に大事なのは、ゲノムや脳の本質にどこまで迫れるか、自分の切り口を探して考える。もう少し時間をかけてそれをやる必要があります。そうすると生きていることの大切さがわかり、その中での医療や教育が見えてくるはずです(結局、時間をかけて考えるという「愛づる」に戻りました)。
 お暑いですね。夏休みのお話など、どうぞこの欄に書き込んで下さい。
 
 
 【中村桂子】


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