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研究館より

ラボ日記

2024.03.01

BRH30年

2023年は慌ただしい一年でした。BRH設立30周年の記念イベントが目まぐるしく実施されたのです。ふと思うと、自分もBRHで30年間の年月を過ごしてきたのではないでしょうか。BRHにきたのは1994年4月。都会田舎と言われる高槻市にポツンとした硏究機関、“大きな”都会にある“大きな”大学の“大きな”ラボに在籍していた私にとっては少し寂しく感じましたが、研究機関のすべてがピカピカで新しい。それだけじゃなく、それまでに見たこともないおしゃれな研究機関でした。しかし、まさかこの研究機関で30年間の研究生活を過ごすとは思いませんでした。

BRH初代顧問である大澤省三という著名な進化生物学者とのオサムシ研究が私のBRHでの研究人生の始まりでした。オサムシの美しさにも惹かれましたが、何と言っても系統樹の枝の末端にあるオサムシの写真を眺めたときに、こんなこともあるのかというワクワク感が私を昆虫生理学の研究から進化研究の世界へと導き、それが偶然にも生涯の研究となったのではないかと思っています。その後、顕微鏡を通してしかその姿が見えないイチジクコバチの研究や、昆虫をはじめとする節足動物の進化を俯瞰する分子系統解析の研究など、時には楽しく、時には苦しく、ですが、基本的には良い30年間の研究生活を過ごしてきたと思います。それは研究環境や、何と言っても優秀な研究補助員、奨励研究員と学生の皆さんとの出会いに恵まれた結果であり、心より感謝したいと思います。進化研究の原点である「観察と比較」を心に銘記して、時間と空間という二つの軸から生物の進化と多様化を理解することは、私の進化研究の終始の目標と研究スタイルでした。これからもできる限りその目標に向かって少しでも前進できるよう努力を続けたいと思っています。4月20日の「生命誌の日」でも私のBRH30年を振り返ってみたいと思いますので、ご都合が良ければぜひお越しください。

蘇 智慧 (室長(〜2024/03))

所属: 系統進化研究室

カイコの休眠機構の研究で学位を取得しましたが、オサムシの魅力に惹かれ、進化の道へと進みました。1994年から現在に至るまで、ずっとJT生命誌研究館で研究生活を送ってきました。オサムシの系統と進化の研究から出発し、昆虫類をはじめとする節足動物の系統進化、イチジク属植物を始めとする生物の相互作用と種分化機構の研究を行っています。