論文

Miyazawa H., Ueda C., Yahata K. and Su Z.-H. (2014)

Molecular phylogeny of Myriapoda provides insights into evolutionary patterns of the mode in post-embryonic development.

Scientific Reports 2014, 4: 4127 doi:10.1038/srep04127

解説

  •  多足類動物は、分類上多足亜門(Myriapoda)として、六脚亜門(広義の昆虫類)、甲殻亜門(エビ・カニなど)、鋏角亜門(クモ・カブトガニなど)とともに節足動物門を構成している。多足亜門は、4綱(ムカデ綱、ヤスデ綱、コムカデ綱とエダヒゲムシ綱)を含み、またムカデ綱は5目、ヤスデ綱は15目、コムカデ綱は1目、エダヒゲムシ綱は2目にそれぞれ分類されている。近年の分子系統解析では、多足亜門の単系統性が支持されるものの、綱間と目間の関係については、信頼性の高い系統関係が得られず、解明に至っていない。一方、多足類動物は孵化してから、脱皮と増節を繰り返す。これは多足類の変態というが、その変態は整形変態、真増節変態、完増節変態と半増節変態、4つの様式に分けられる。これらの変態様式はどのように進化してきたのか? 多足類動物の祖先はどのような変態様式を持っていたのか? 興味深い問題の解明が待たれる。これらの問題を明らかにするためには、多足動物の系統関係を解明しなければならない。
     本研究は3つの核タンパク遺伝子を用いて、多足亜門の綱間と目間の系統関係の解明を行った。また、得られた系統樹に基づき、多足類の分岐年代と祖先形質の推定を行った。その結果、コムカデ綱が最初に分岐した、もっとも祖先的な多足類系統であることが判明した。ヤスデ綱とムカデ綱内部の目間の関係については形態から提唱された仮説を強く支持した。分岐年代推定の結果、コムカデ綱と他の多足類動物との分岐(多足類動物の最初の分岐)はこれまで考えたより遙かに古く、カンブリア紀初期に遡ることが判明した。この結果はコムカデが海で誕生し、独立的に陸上進出を果たしたことを示した。また、変態様式の祖先状態の推定を行った結果、多足類動物の祖先は半増節変態を行っていたことが示され、体節数と足の数が少なかったことを示唆した。

一覧へ戻る