論文

Okamoto, T., MACGOWAN, I. and Su, Z.-H. (2012)

Predation on the pollinating fig wasp of Ficus erecta by larvae of Silba sp. (Diptera: Lonchaeidae).

Entomological Science 15: 288-293.

解説

 イヌビワ (Ficus erecta) は、イチジク属植物の1種で、中国南部から台湾、琉球列島を経て、本州の関東まで生息している。イヌビワコバチ(Blastophaga nipponica)がイヌビワの唯一の送粉者で、両者の間に絶対的な相利共生関係を構築している。また、イヌビワの花嚢には非送粉コバチのオナガイヌビワコバチ(Sycoscapter inubiae)も生息している。本研究は、和歌山集団のイヌビワの花嚢から第3の共生者を発見し、その生態や、イヌビワーイヌビワコバチ共生系に与える影響を調べた。その結果、第3の共生者は双翅目クロツヤバエ科のSilba属に属する未記載種であることが判明した。また、Silba sp. はイヌビワコバチの雌成虫のみを補食することが分かり、Silba sp. の幼虫がいる花嚢では、コバチの羽化率が著しく低くなる傾向が見られ、Silba sp. の存在はイヌビワコバチの生存率に負の影響を与えることが明らかになった。これらのことから、Silba sp.によるイヌビワコバチの捕食は、イヌビワの花粉の分散を妨げ、イヌビワの繁殖成功に著しい負の影響を及ぼす可能性が考えられる。また、Silba sp. は和歌山県と沖縄本島からのみ見つかり、これらの集団の共生系維持の戦略の解明が期待される。

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