論文

Azuma, H., Harrison R.D., Nakamura, K. and Su Z.-H. (2010)

Molecular phylogenies of figs and fig-pollinating wasps in the Ryukyu and Bonin (Ogasawara) islands, Japan.

Genes Genet. Syst. 85: 177-192 (2010).

解説

 日本産イチジク属植物とイチジクコバチの分子系統解析の論文が「Genes & Genetic Systems」に掲載されました。イチジク属植物とイチジクコバチとの関係は種特異性の最も高い共生関係の一つで、昆虫と植物との共進化と共種分化を研究するためのモデルシステムである。日本はイチジク属植物分布域の北限にあたり、島々からなる琉球列島は日本産イチジク属植物の主な分布域である。このような地理的条件下では共生関係は崩壊しやすいと考えられている。本論文は、日本産イチジク属植物とイチジクコバチの系統関係を分子情報を用いて解析し、「1種対1種」共生関係の維持状況や協調的系統分化について調べたものである。その結果、日本産イチジク属植物とイチジクコバチは分布域北限の島々に分布しているにもかかわらず、「1種対1 種」共生関係が極めて厳密に維持されていることが判明し、協調的系統分化も確認された。また、小笠原諸島には3種の固有種がいるが、本論文では、そのうちの2種(トキワイヌビワと大トキワイヌビワ)の解析を行ったところ、小笠原イチジクは恐らく琉球列島に分布するイヌビワを共通祖先とし、島内で種分化して現在の小笠原イチジク属とイチジクコバチの共生関係を構築したことが分かった。

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