ラボ日記

研究セクターのメンバーが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。月二回、メンバーが交替で更新しています。

2019年6月3日

「進化」と「多様化」を考える

蘇 智慧

進化と多様化は進化研究の分野のみならず、一般的にもよく使われる用語になっていると思います。しかし、この二つの用語に対する理解や使い分けについて、曖昧や混沌としているところが多いように思います。若しくはあえてそのようにしているのかもしれません。なぜなら二つの用語をきちんと区別するのは実に難しいです。どの用語を使えばより適切に表現できるのか、一度くらい迷ったことはないでしょうか。私にはありましたので、今回の日記でちょっと考えてみたいと思います。

生物は38億年の時間を経て共通祖先から進化してきました。文章中の「進化」を「多様化」に置き換えても意味はあまり変わりません。ここでは「進化」=「多様化」。しかし、「昆虫類は地球上最も多様化した動物群である」という文章はどうでしょうか。昆虫類の種数が多いことを表すのによく使われる表現です。この文章の「多様化」を「進化」に置き換えますと、元の文章の意味は全く感じ取れず、昆虫類が最も“進んだ”動物群であるような意味合いになってしまいます。つまり、ここでは「進化」≠「多様化」。もう一つの文章を考えてみましょう。ヒトはチンパンジーとの共通祖先から分かれて進化しました。この文章では、「進化」を「多様化」に置き換えても、文章自体は特に問題はないですが、意味合いが若干違うように思います。「進化」の場合は、ヒトとチンパンジーが共通祖先から分かれた時点から現在までの(形態や機能が時間軸に沿った)ヒトの進化過程のことをより強調しています。一方、「多様化」の場合は、進化過程そのものよりもその過程においてヒトが様々な“人種”に進化したことをより強調した表現になっています。以上にあげた文章から何か読み取れたのでしょうか。一つだけ言えるのは「多様化」という用語には種分化などによる多様なものの出現という意味合いが必ず含まれている点ではないでしょうか。では、図を見てみましょう。右図について「進化」と「多様化」のどちらで表現してもおかしくありません。一方、左図については祖先種から現生種へと進化はしているものの、多様なものが生まれていないので、「多様化」で表現することは適切ではないでしょう。しかし、「進化」の中に「多様化」があり、「多様化」の中にも「進化」がある、その理解も大事です。

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