生命誌ジャーナル

2015年間テーマうつる

生きものの特性は「膜・複製・代謝・進化」と教科書にあり、私たちもそう考えてきました。しかし、細胞、ミトコンドリア、葉緑体、ウイルスのすべてがもつゲノムを切り口にすると、本質は「複製」と「進化」ではないかと思えてきました。ここから改めて「生きている」とはどういうことかを問うのが今年のテーマです。

葉緑体ミトコンドリアから
「生きている」を考える

真核生物の酸素呼吸の場であるミトコンドリアと、植物の光合成の場である葉緑体は細胞内共生によって生まれたオルガネラ(細胞内小器官)であり、起源は真正細菌です。共に独立生活をしていた名残のゲノム(オルガネラゲノム)が存在しますが、進化の過程で遺伝子の多くが核ゲノムに移行または消失しました。そのためミトコンドリア、葉緑体のはたらきにはオルガネラと核両方の遺伝子発現が必要であり、連携してはたらくしくみは複雑で未解明な点が多く残されています。複数のゲノムが1つの細胞で共にはたらく様子を知り、真核生物の生きるしくみを考えます。

「生命誌アーカイブ」より

これまでの生命誌で取り上げた約600の記事の中から、葉緑体・ミトコンドリアと生きものの進化に着目した17の記事を紹介します。

  1. 1.ミトコンドリアをもたない真核生物 長谷川政美(+橋本哲男)4号(1994年)
  2. 2.ミトコンドリアの核様体 石丸(林)八寿子 5号(1994年)
  3. 3.細胞の中はジャングルである 月田承一郎 9号(1995年)
  4. 4.ミドリムシは動物?植物?分子系統樹が藻類の世界に迫る 石丸(林)八寿子 10号(1994年)
  5. 5.揺れる藻(も)の世界 井上勲 20号(1998年)
  6. 6.藻の眼から細胞内共生へ 堀口健雄 20号(1998年)
  7. 7.藻を研究するわけ 大濱武 20号(1998年)
  8. 8.DNAで渦鞭毛藻のキメラを解く 稲垣祐司 20号(1998年)
  9. 9.藻 ― 食べて食べて食べて...... 細胞の進化へのチャレンジ展(~99.9)20号(1998年)
  10. 10.生きたオルネガラを見る 丹羽康夫 23号(1999年)
  11. 11.遺伝子の中の厄介者、イントロンはどうしてなくならないか ─ イントロンに感染した真核生物のゲノム 大濱武 29号(2000年)
  12. 12.細胞が行なうリサイクルとその進化 工藤光子 30号(2001年)
  13. 13.心で観る しぶとくねばり強く 黒岩常祥 38号(2003年)
  14. 14.遺伝子が「一生を過ごす」場としてのゲノム 小保方潤一 56号(2007年)
  15. 15.多様な細胞分裂様式から見る植物の進化 嶋村正樹 58号(2008年)
  16. 16.4億年もRNAを書き換え続けてきた意味 由良敬 66号(2010年)
  17. 17.水圏生態系を支えるミクロな食物連鎖 柏山裕一郎 77号(2013年)

葉緑体・ミトコンドリア研究を通して

DNAの二重らせん発見など、全ての生きものに共通のしくみを見出す研究の主役は、大腸菌などの原核生物でした。一方、私たちの目に見える生きものはすべて真核生物。オルガネラゲノムを含めると、細胞内には複数のゲノムがあり、その生きるしくみは原核生物とは段違いに複雑です。だからこそ、現在の豊かで多様な生きものの世界があるのです。そんな生きものをじっくり見つめ、普遍と多様をつなぐ活動を続けたいと生命誌研究館では考えています。