論文

Masaki Kanayama, Yasuko Akiyama-Oda, Hiroki Oda (2010)

Early embryonic development in the spider Achaearanea tepidariorum : Microinjection verifies that cellularization is complete before the blastoderm stage

Arthropod Structure and Development 39, 436-445.

解説

 ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろう!ラボ(細胞・発生・進化研究室)の論文が国際学術専門誌Arthropod Structure & Development に掲載されました。  ショウジョウバエ胚では、核の数が分裂によって約6,000個に到達した後に細胞のしきりができます。この現象を細胞化と呼びます。ショウジョウバエ胚ではこの細胞化の前に、つまり、多数の核が細胞質を共有している時期(多核性胞胚期)に、体の繰り返しパターンや背腹軸パターンを決める遺伝子が重要な働きをしていることが分かっています。細胞化のタイミングは胚の形づくりの仕組みを理解する上で非常に重要です。当研究室では、ショウジョウバエと同じ節足動物でありながら、昆虫ではない鋏角類のオオヒメグモを研究に用いています。私たちが研究にクモを使う大きな理由のひとつは、クモでは細胞化のタイミングがショウジョウバエに比べて早く、ショウジョウバエとは異なる形づくりの仕組みが発見できるのではないかと考えてきたからです。ところが実は、オオヒメグモ胚でいつ細胞化が起こっているのかを示す実験による直接的な証拠はなかったのです。
 今回の研究で私たちは、マイクロインジェクション法を適用することで、蛍光物質や蛍光タンパク質をコードするmRNAをオオヒメグモ胚の細胞へ導入することに成功しました。マイクロインジエクションにより注入された蛍光物質は初期胚の一部の領域に留まり、そのままその一部の細胞に受け継がれることが分かりました。解析から、オオヒメグモでは少なくとも16核期にはすでに細胞のしきりができていることが明らかになりました。
 クモ胚ではショウジョウバエ胚と比べて、非常に早い時期に細胞化が完了していることが示されました。このことは、クモ胚のパターン形成では細胞間のコミュニケーションが重要な役割を果たしていることを意味します。
 今回の研究のもうひとつ重要な点は、mRNAや二本鎖RNAを胚の一部の細胞に導入できるようになったことで、機能解析の幅が広がり、オオヒメグモの利用価値が高まったことです。この論文を基礎として、さらなる成果が期待されます。

一覧へ戻る