論文

Shigetaka Nishiguchi, Hiroki Oda

Structural variability and dynamics in the ectodomain of an ancestral-type classical cadherin revealed by AFM imaging

J Cell Sci (2021), Volume 134, Issue 14 (Open Acess: CC BY 4.0)

解説

動物の細胞をつなぐ「古い分子」を可視化

DNカドヘリンとDEカドヘリン、を解析の対象としましたが、分子長が大きい前者は祖先型、分子長が小さい後者は派生型であることを私たちは以前の研究で示していました。つまり、節足動物の進化の過程で、長いカドヘリン分子から短いカドヘリン分子が誕生したことが想定されていることになります。派生型のカドヘリンについては2016年に原子間力顕微鏡での観察データを報告していたこともあり(Nishiguchi et al., 2016)、今回の論文では、特に祖先型のカドヘリン(DNカドヘリン)にフォーカスして分子形態の解析を行いました。その結果、その長いカドヘリンが複数箇所で折れ曲がって様々な形状を取ること、そして、その形状がフレキシブルな折れ曲がりで変化することを明らかにすることができました。また、分子形態の観察に加えて、接着に関わる分子領域の特定も行ったことで、祖先型のカドヘリンの折れ曲がり構造が細胞間接着に関与する可能性を示すことができました。これらの研究成果は、地球上に現れた初期の多細胞動物がどのような分子的仕組みで多細胞体制を形作っていたかを理解するための貴重な情報源になる他、多細胞体制が確立した以降も多細胞体制を支える分子的仕組みが変化を続けてきたことを具体的に示す情報ともなります。しかしながら今回の研究では、カドヘリン分子が接着分子としてまさに働いている状態の分子形態を捉えることができませんでした。この問題への取り組みは今後も続けることになります。



 第一著者の西口茂孝氏はオリンパスで仕事を続けながら、大阪大学大学院の社会人学生として私たちの研究室に所属し、本研究に取り組みました。西口氏は2019年3月に博士号を取得しましたが、今回、博士課程でのメインの研究成果を発表することができました。現在西口氏はオリンパスを離れ、大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 生命創成探究センター(エクセルズ)に在籍して研究を行っています。
西口茂孝氏個人のインタビュー記事が論文とともに雑誌に掲載されました(こちら)。



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