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第4弾 虫愛づる心から生命誌の広がり

生命誌研究を大きく展開されたお二人の近況です。まず大澤省三先生は、研究館設立時「オサムシの進化をDNAから探る」研究の中核となり生命誌の概念をみごとに具体化されました。世界中のアマチュアをまきこみ、大陸移動と生物進化の重なりから自然を見る研究の先鞭をつけました。そこから生まれた静と動の進化は魅力あるアイデアです。最近、研究人生を振り返った長編記録「虫から始まり虫で終わる~昆虫採集から分子生物学へ」を発表されました。是非お読み下さい。

そして吉川寛先生。2001年に始めたアゲハチョウ産卵の際の食草確認のしくみ探索が、遺伝子の特定から、細胞、器官、個体の行動までを結ぶ成果となり、注目を浴びました。「チョウが食草を見分けるしくみを探る」ラボで更に深めていきます。ここでご紹介するのは、ラボでの仕事と同時に始めた「都会のオアシス蝶図鑑」です。自宅近くで撮り続けた蝶の生態写真と観察記録の10年を楽しんで下さい。お二人共まさに「虫愛づる人」です。
「都会の中の蝶のオアシス」へ

虫愛づる館 ー生命誌アーカイブよりー

1991年、BRHの準備室ができた時、生命誌という新しい考え方を具体的に示す研究は何だろうと話し合いました。昆虫を中心にしようと決めたのは、身近(アマチュア愛好家が大勢います)、多様、小さいなど、さまざまな条件で研究館に合っていたからです。学者仲間では、昆虫を表に出すことは憚られていたのですが、思い切ってオサムシとチョウを選びました。岡田節人館長(当時)はナナフシも面白いと言われ、調べたらその通りでしたが、実際の研究にまでは至りませんでした。でも今も館内で元気にしています。昆虫という選択によってBRHでなければできない研究の方向性を出すことができました。いつも楽しく、考え、新しいものを求めよう。BRH精神です。

【SCIENTIST LIBRARY】大澤先生を知る

2号Scientist Library 無の発見:大澤省三

BRHのオサムシ研究は、大澤先生の中にある昆虫少年そのままのところと分子生物学のパイオニアという絶妙の組み合わせあっての成功でした。ここでは先生のこの二つの面が浮き彫りにされています。遺伝暗号の変化の発見はユニークな研究です。

【SPECIAL STORY】オサムシ研究を知る

28号Special story オサムシから進化を語る:大澤省三

日本全国のオサムシの系統樹づくりから始まった研究。まず資料の入手が大変です。ここで活躍して下さったのがアマチュアの愛好家です。こうして作った日本列島のオサムシ分布を見て、これは日本列島形成を語っていると指摘して下さったのは地質学者、研究分野を超え、プロとアマの垣根を越え…まさに自然と向き合う面白さを堪能し、BRHらしい新しい方向を出せた研究です。

【SCIENTIST LIBRARY】吉川先生を知る

46号Scientist Library DNAのふえ方から見えた生きものの姿:吉川 寛

チョウ好き、それもイモムシを育てるのが好きで、アゲハチョウをカンアオイで育てたらギフチョウ風になったという話はどう見てもBRH向き。もっともこれは家での研究で、大学では枯草菌でのDNA複製という分子生物学の重要テーマで見事な成果をあげました。

【SPECIAL STORY】チョウと食草の研究を知る

32号Special story チョウと食草をつなぐ味覚:吉川 寛

アゲハチョウとカンアオイの話から、チョウと食草の共進化をBRHの研究テーマにとりあげることになりました。それにはチョウが幼虫の食草を見分けるしくみを知らなければなりません。チョウの味覚受容体を探るという冒険が始まりました。

【RESEARCH】現在に続くBRH研究を知る

現在、4つの研究室では昆虫などの小さな生きものを対象に発生・進化・生態系を総合的に見る研究をしています。生きものの歴史物語を読み解く作業です。

50号Research「昆虫と植物が作る生態系の基盤」:DNAから進化を探るラボ:蘇 智慧

大澤先生のオサムシ研究を受け継ぎ、イチジクとコバチを用いて進化、特に種分化を考えようという研究です。

【TALK】細胞を愛づる

38号Talk 生物学のロマンとこころ:岡田節人×中村桂子

現代生物学は日常から離れ生きものを見ていない。自然の中の生きもの、日常というと学問的ではないようですが、これこそ高度な知ではないか。岡田節人名誉顧問と中村館長の語り合いです。

【TALK】五感で対象を捉える

39号Talk 生を写す視点:佐々木丞平×中村桂子

江戸時代に精細な自然観察をもとに独立の画風を確立した写生画の円山応挙を研究する佐々木丞平さんと中村館長が語り合います。科学と芸術の基本にある共通の視点が語られます。