詳細
日時
2026/9/19(土)
場所
JT生命誌研究館
出演者
國枝武和氏(兵庫県立大大学大学院理学研究科)
板倉由季氏(京都大学大学院薬学研究科)
黒田純平氏(JT生命誌研究館)
主催
JT生命誌研究館
参加方法
参加無料・予約不要 ※本シンポジウム講演は専門性の高い内容です。
【現地参加】直接会場へお越しください。
【オンライン】本ページよりライブ配信を行います。
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内容

企画趣旨
生きものはそれぞれの種や系統で、特殊な性質をもつタンパク質やタンパク質からなる特殊な構造物を進化させ、個性的な生存戦略を確立している。遺伝システムとしての生きもののしなやかな適応的進化について、タンパク質の構造や機能、動態に注目して議論する。プログラム
| 13:10 | 開会のあいさつ |
| 13:15-14:00 | 「極限耐性を駆動するクマムシ固有のタンパク質の構造と機能」 國枝武和(兵庫県立大学大学院理学研究科) |
| 14:00-14:45 | 「細胞外のタンパク質が形づくる昆虫感覚器のナノ構造」 板倉由季(京都大学大学院薬学研究科) |
| 休憩 | |
| 14:55-15:40 | 「コラーゲン線維の配向が形づくる脊椎動物の多様な形態とその進化」 黒田純平(JT生命誌研究館/大阪大学大学院理学研究科) |
| 15:40-16:10 | 談話会「研究の芽はどのように生まれるのか」 |
| 16:10 | 閉会の言葉 |
講演概要
「極限耐性を駆動するクマムシ固有のタンパク質の構造と機能」
國枝武和(兵庫県立大学 大学院理学研究科 )
地球上には、ヒトの想像を超える驚異的な環境適応能を持つ生物が存在します。なかでも緩歩動物(クマムシ類)は、地球上で最も過酷な環境ストレスに耐え得る微小動物として知られています。陸生クマムシは周囲の乾燥に伴い、生命活動を一時的に停止する「乾眠(クリプトビオシス)」へと移行し、通常の生物では致死レベルの高温・高圧・真空・放射線に対して極めて高い耐性を示します。近年の分子生物学的解析により、この極限耐性機構にはクマムシ固有の特異的タンパク質が深く関与していることが明らかになってきました。本講演では、放射線からDNAを保護する機構や、必要時に細胞内を硬化させて防御するシステムなど、彼らの生存戦略を支える独自のタンパク質について解説します。


「細胞外のタンパク質が形づくる昆虫感覚器のナノ構造」
板倉由季(京都大学大学院薬学研究科)
生きものの多様な体表構造は、外界との相互作用を可能にし、生物種ごとの個性を生み出す基盤です。しかし、感覚受容や構造色、超撥水性などを支えるナノ構造が形成される仕組みは、ほとんど不明です。私たちは、ショウジョウバエの嗅覚器官に見られる、匂い分子を通す約30 nm径の孔が多数開いた外骨格クチクラの形成機構を調べました。その結果、動物に広く保存されているZona Pellucida Domain (ZPD) タンパク質ファミリーのうち四種類が、細胞外で重合してマトリクスを形成し、その力学的性質を介して孔の形成に寄与することを見出しました。本講演では、タンパク質の分子機能だけでなく、重合してできる細胞外マトリクスの物性が、生きものの多様なナノ構造や機能を支える仕組みについて議論します。


「コラーゲン線維の配向が形づくる脊椎動物の多様な形態とその進化」
黒田純平(JT生命誌研究館)
脊椎動物の身体は、Ⅰ型・Ⅱ型コラーゲンを中心とした細胞外の線維構造によって支えられています。コラーゲン線維は単なる構造材ではなく、細胞による精密な制御のもと三次元的に配置されることで、組織固有の”形“と”機能“を生み出します。しかし、この配向がどのように生み出され、進化の中でどのように変化してきたのかは十分に理解されていません。私たちは魚類の鰭に特有のコラーゲン構造体=アクチノトリキアを対象に、これを操作する細胞群の役割や、配向制御に必須な遺伝子の機能などを明らかにしてきました。本講演では、コラーゲン線維がどのように脊椎動物の形をつくり、その制御の破綻や進化的変化がどのように多様な形態を生み出してきたのかについて、最新の知見を紹介します。


当日配信
2026年9月19日(土)13:10〜 配信いたします
※(9/18追記)ライブ配信のURLが変更になっておりますのでご注意ください。
下記からライブ配信をご覧になれます。
ご質問への回答
生命誌公開シンポジウムにたくさんの方々にご参加いただきありがとうございました。講演に対し会場から、オンラインから、たくさんのご質問をいただきましたが、時間の関係で、オンラインからのご質問を一部紹介することができませんでした。講演者の國枝武和さんから、紹介できなかったご質問に対する回答をいただきましたので以下に掲載します。寿命が1ヶ月半ぐらいとのことでしたが、乾眠状態になったあとも同じぐらい生きていけるのでしょうか
乾眠期間は寿命には含まれず、活動期間(水の中で生活している期間)の総和が概ね寿命に近くなると死んでいくことになります。ありがとうございます。哺乳類では酸化ストレスによって老化すると思います。クマムシは非常に多くの抗酸化タンパクがあるとのことですが、寿命が一ヶ月程度と短いのはなぜでしょうか。クマムシの老化の原因は何でしょうか
鋭いご指摘ありがとうございます。ご指摘のように酸化ストレスは老化の一因として知られますので、抗酸化能が高ければ寿命が長くなっても良さそうです。クマムシも種類によってはずっと長い寿命のものもいますが、例えばヒトの寿命を超えることはありません。抗酸化能が高いとされる他の生物でやはり寿命が同程度のものも知られていますので、明確なお答えにならず恐縮ですが、生物種による寿命の違いは酸化ストレスだけでは決まっていないのだと思います。クマムシの老化についてはまったくわかっておりません。独立した呼吸系や循環系を持たない単純な構造なのでどこかで代謝のバランスが維持できなくなるなどといったこともあるかもしれませDsupを導入した哺乳類細胞でも乾燥耐性が付与されるのでしょうか。
実験結果はないのですが、おそらくはかなり難しいだろうと考えております。 放射線の最大の生物影響はDNA障害ですので、DsupがDNAの周りに存在してDNAを守ることで放射線耐性の向上に資することができたと考えております。一方で、乾燥や脱水はDNA以外の細胞の至る所に重篤な障害を発生させるため残念ながらDsupだけでは乾燥耐性の向上は困難と思われます。chasについてでございますが、細胞内には線維化するタンパク[アクチン、チューブリンなど]が多くあると思いますが、なぜchasにだけ乾燥耐性があるのでしょうか
こちらも鋭いご指摘ありがとうございます。役割としては中間径フィラメントと呼ばれる機械的な強度を与えるものに類似しているのではないかと考えています。CAHS の一つの特徴は乾燥するクマムシの体内で大量に合成される点です(常に大量に合成しているクマムシ種もいれば、乾燥開始を感知してから急激に合成を開始する種もいます)。このため繊維密度がかなり高くなっているということが1つの原因になっているかもしれません。脱水していない場合は線維化しないで邪魔をしないので大量にためることができて、乾燥して必要になった時に一気に高密度の線維群を形成できるということも重要な性質と思います。館内の催しについて
研究のお話を聞いたり、実験を体験したり、生きものを観察したり、研究員と直接語り合ったり、子供から大人までどなたにも驚きと発見が待っています。参加無料です。

