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発見:ゲノムに隠れていたタンパク質たちとその働き

詳細

日時

2022/01/15(土) 14:00-15:30

場所

JT生命誌研究館

出演者

松本 有樹修 准教授 (九州大学)

主催

JT生命誌研究館

参加方法

※参加無料
※申込み不要

内容


タンパク質はmRNAの読み枠の塩基配列(open reading frame, ORF)をアミノ酸配列に翻訳して合成されますが、データベース(NCBIなど)に登録されているORFは実は(実験結果ではなく)予想配列であるということは意外と知られていません。私たちは、データベースのORFが間違っている例や、データベースにない新規ORFなどを多数発見し、遺伝子改変マウスを用いて新規ORFが持つ多様な生理機能を明らかにしました。本講演ではこれら未踏のタンパク質の世界を俯瞰し紹介します。


講師:松本 有樹修 准教授 (九州大学 生体防御医学研究所 )


 

開催記録

 

1月の生命誌の日の催し
「発見:ゲノムに隠れていたタンパク質たちとその働き」
講師:松本 有樹修 さん(九州大学)

レポート

ヒトのゲノム(DNA)は32億の文字(塩基)でできている。DNAから塩基配列が写し取られてmRNAが合成され(転写)、種々のタンパク質が合成される(翻訳)。しかし、それに必要なDNAの領域は32億塩基のうち、わずか1.5%である(coding 領域)。残りのDNA領域はnon-coding領域と言われていた。ところが、今までnon-coding領域と言われていたところから、多くのmRNAが合成されてタンパク質が合成されていることがわかってきた。なぜ今までそれが分からなかったかというと、coding 領域がそなえている標準的な特徴――タンパク質合成開始の塩基配列AUGと100アミノ酸以上をコードする長さ――を欠いていたからである。実はそういう非典型的なタンパク質合成は全体の40%もある。マウスで、新しく発見されたタンパク質のうちいくつかを欠損させてみると、それぞれ、骨格筋がおかしくなったり、傷の修復が遅くなったり、社会行動が少しおかしくなったりした。今まで知られていなかった非典型的なタンパク質合成によって合成されるタンパク質はまだまだ数多くありそうで、重要な役割をはたしているようだ。


当日は37名の方にご参加いただきました。質疑応答では、創薬についての専門的な話題や
ゲノムDNAの進化などについて、活発な意見交換が行われました。

レクチャーについて

JT生命誌研究館の研究員をはじめとするさまざまな分野の研究者が、探究と発見の日々をお話します。
進行形の研究、そこで考えたこと、苦労話など研究を身近に感じる絶好の場です。
レクチャーを聞いた後には、会場も一体となって話の輪が広がります。入場無料です。