名誉館長の中村桂子が、情報と生命の関係を考えます。情報という切り口から、生きものたちの関わりを描く生命誌が始まります。
第1回
最近は「AI社会」と言われ、AIが人間を凌ぐと言う人も少なくありません。しかしここで、AIと人間とはまったく異質なものという、あたりまえのことを忘れてはなりません。そもそも情報とは、生命体による認知や観察と結びついた「生命情報」であり、そこには意味があります(AIは意味を知りません)。
「情報」の誕生は、40億年前の生命誕生の時です。自己創出する存在である生命体を支えるDNA(ゲノム)は、その中にデータとプログラムを合わせもつ独特の情報体です。この情報は、物質の化学反応とつながっているところも独特です。
ゲノムの変化により、新しい能力をもつ生きものが生まれ、複雑な生態系ができる過程を、情報という視点から見ていこう。そこから生命とは何か、人間とは何かを考えよう。研究館は今ここにいます。
研究館のエントランスを飾るシンボル展示の一枚に「生命誌マンダラ」があります。中央の大日如来を受精卵に見立てて、細胞から個体、種、生態系へと、生きものがもつ階層を貫くゲノムの多様な働きを俯瞰する生命誌の表現です。そして今、生命情報という切り口で、原核生物から言葉や想像力(創造力)を生み出す脳をもつヒトへの進化をたどる、もう一つの「生命誌マンダラ」に挑戦したいのです。
ここでの、様々な生きものの関わりはどのようなものでしょうか? 20Wの電力ではたらくとも言われる脳をフル回転させ、新しい知の創生を楽しみます。

