プラナリアを使った実験の指導をする大濱武研究員(写真=外賀嘉起) あっ、DNAが釣れた! 自分で作った器具で、白くふわふわしたDNAを引っかける(写真=外賀嘉起) 遠心分離のあと、上澄み液を取り出す。はじめてDNAと出会う緊張で、ピペットを持つ手に思わず力が入る(写真=外賀嘉起) 「生物学は体力です」。DNAの実験を担当した高橋直研究員(写真=外賀嘉起) やっと私もDNAがとれました

「本物のDNAを見てもらおう」と、生命誌研究館は昨年8月23~26日の4日間、サマースクールを開講した。地元高槻市ばかりではなく、吹田市や豊中市、京都はては東京、横浜からも熱心な中学生、高校生が集まった。定員30名を大幅にオーバー、予定を変更して60名を2回に分けて行なうほどの人気である。取材がてら参加した「動物細胞からDNAを取り出す実験」の体験をリポートしたい。

冷凍の肝臓が一人一人に配られる。どこでも手に入るニワトリのレバーからDNAがとれるかと思うと、どきどきする。まずレバーをカミソリで切り刻む。もし指を切って血が出たら、私のDNAもニワトリのDNAにからまって見えるのではないかと思ったが、残念ながらヒトの赤血球には核がないのでDNAはないそうだ。刻んだレバーに組織溶解液を加え、さらにスライドガラスをすり合わせてすりつぶし、核酸とたんぱく質を分離していく。しだいにネバネバと糸を引く、なるほどDNAは糸状であるのだと実感。遠心管に移してフェノールとクロロホルムを入れて蓋をしめる。手にはピッタリフィットの手袋。フェノールは劇薬なのだ。3分間必死に振り続ける。腕が痛くなる。担当の高橋直研究員「生物学は体力です」。いつもご苦労さまです。

ここまでが勝負。あとは懸濁した液体を、わずかな重さの違いも分離してくれる高速遠心分離器にかけて30分待つ。遠心管が取り出されると、層をなして分離している。下部の茶色の液体はたんぱく質がフェノールとクロロホルム液に溶けたもの。透明の上澄み液にDNAとRNAが混在しているのだ。この上澄み液をピペットで取り出す。NaClとイソプロパノールを加えて撹拌すると、ふわふわ白い雲のようなものが見えてくる。これがDNA。マジックではなくて、科学。低濃度のイソプロパノールではDNAだけが沈澱してRNAはそのままというわけ。

いよいよ、DNA釣りだ。ピペットの先をバーナーで焼いてちょっと曲げ、道具も自分で作っちゃう。工夫する心、うん、これだね。白い柔らかいかたまりが、釣れる。70%のアルコールの中でふわふわしているDNAは、よく見ると確かに細い糸がからみあっているよう。DNAを目と身体で実感した一日だった。第2日目には「プラナリアの染色体を見る実験」も行なわれた。

閉講式では中村副館長が「実験は失敗してもいいのよ。失敗したときに、どうして?と考えるのが大事。ペニシリンも失敗した実験から発見されたのよ」としめくくりの言葉。一人一人に修了証が渡され、参加者は「また来たい」と感慨深げだった。

(本誌:高木章子/たかぎ・あきこ)