研究協力者ヨハネスと。イザベラ島シエラ・ネグラ火口周辺、ダーウィニオサムヌス群落にて。

長い間ミミズの研究をしていると言うと、なんだか物好きに見られるが、どうしてどうしてこの生き物はなかなか大切なものだ。かのダーウィンだってビーグル号の航海を終えた後は、ミミズの観察や研究を行ない、最後の著書は『ミミズの働きによる有機土壌の形成及びミミズの習性について』というくらいだ。その本に亜南極の海洋島にミミズがいるという報告にふれて「海水に耐性のないミミズが海洋島にいるのは不思議だ」と記している。彼は、大陸から1000kmも離れた海洋島、ガラパゴス諸島にミミズがいるとは思いもしなかったらしい。同諸島のサンタ・クルス島にあるダーウィン研究所を訪れたが、ミミズに関する知見も標本もなかった。

しかし、サンタ・クルス島の古老は、「スカレシアの林には1インチ程の細い土着のミミズがいたが、入植開始(1935年)後、大きなミミズに入れ代わり、粉っぽかった土が顆粒状になった」と語っている。そこでガラパゴスの島々を調査してみた。

農地では、大きな導入種のミミズしか見つからなかったが、自然の林や高所にある植物群落、海水の影響をうける海浜植生からは、土着のものらしい、ムカシフトミミズ科に属すると思われる5種類のミミズが採れた。その中の1種は、日本の松島湾の海浜で採集されたイソミミズと同属らしかった。ダーウィンが研究していたツリミミズ科は海水に弱いが、ムカシフトミミズ科は海水に二次適応しているといわれる。

ミミズの最古の化石には4億5000万年前のものがあり、現在3000種にも分岐している。日本のイソミミズと身近にいるフトミミズのヘモグロビンのアミノ酸配列を比較すると、2億年以上も前に分岐していたと推定できた。

約300万年前に噴火で形成されたガラパゴスに、ミミズはどうやって住み着いたのか。ガラパゴスと日本に同属のものがいるとするとどんな歴史が考えられるのか。ダーウィンの見落とした面白い話をミミズから読み取ってみたい。

(なかむら・まさこ/中央大学経済学部教授)