春4月。展示が新しくなりました。今回はいつもとちょっと違う雰囲気だなあとお感じになるでしょう。入り口を入るとすぐ、1階ホールにエキゾチックな布がダイナミックに展示されています。

「生命の樹一科学と布の芸術にみる生命観」は、生命誌として、生物学研究の枠を超えて生命を考えていこうという気持ちを具体化したものです。生命は、だれにとっても、また、どの学問分野においても重要なテーマです。文化学の田中優子さん、民族学の吉本忍さんをはじめ、多くの方に協力していただき、異分野が一緒になって企画した新しい試みです。

展示の統一モチーフは「樹」。いろいろな時代、さまざまな地域で、人々が生命に対して感じ、考えたこと、つまり生命観が、樹木の形で表されてきました。それを「生命の樹」と言います。この展示ではその文様が描かれたインドやインドネシア、そしてペルシャやヨーロッパなどの布を実物やパネルで見ていただきます。有機的で豊かな色調と文様から、おおらかな生命観を感じとっていただきたいと思います。

現代に生きる私たちは、生命をどう捉え、どのように描くか。系統樹をはじめとして、科学が明らかにした生命像も樹の形で表されることが多いのです。昔の人々が生命に対する考え方を絵にしたように、研究が開いた新しい生命観を生命誌研究館でオリジナルイラストにしました。

今回の目標。理屈で理解するのではなく、まず感じることを出発点にして、生命について考えてみようという意図が成功したかどうか。生命の樹が描かれた各地の布を見て、人々がどのように暮らし、どのような思いを込めて描いたのかに思いをめぐらせ、科学イラストを見て、科学研究からわかってきた生命のしくみを実感していただけると嬉しいのですけれど。

5月には、新しい展示物「コンピュータ・グラフィックス-DNAって何?」が登場。こちらは,眼に見えないDNAを実感していただきたいと願って作ったもの。細胞をかたどったコンピュータがホールに置かれます。その細胞の中を覗き込んで、たくさんの研究からわかってきたDNAの構造や働きをじっくりご覧ください。

(高木章子/本誌)