建築中の杉材の家で。

環境の危機が叫ばれる今、あらゆる面で環境への負担を減らしたい。私は建築分野でそれを目指している。建物の全生涯(原材料の製造、利用、建設、運用、転用、解体)で消費されるエネルギー量を、排出されるCO2の総量で表すと、値がもっとも低いのは、鉄、セメント、ガラス、アルミニウム、プラスチックなどの建材ではなく、木であることがわかっている。木はリニューアブルな資源であり、加工するのにエネルギーはほとんどかからない。環境にやさしいのは、木を使った長持ちする建物だと結論し、私は、今、そんな家を造っている。

その家は北関東の住宅地にある。内陸性気候で夏は暑く、冬は空っ風が吹いて寒いが、年間の日照時間が長く、太陽光には恵まれている。幸い、敷地は南面しており、庇(ひさし)を適当な長さにすれば、冬には太陽光をたっぷり採り入れ、夏は真上から照りつける日差しを遮ることができる。風の流れに沿って窓を作れば夏でも涼しい。屋根が受ける熱は、床暖房や温水作りに利用できる。窓を大きくすれば室内を明るく保てる。

こうした工夫のほかにとくに心掛けたのは、自然の恵みである地場産の杉材を多用することだった。柱、梁、床、壁、天井なと見えるところも、見えないところもほとんどが杉材で、プラスチック、ビニールクロス、合板などは使わない。解体家屋の部材も再利用した。

これほどに自然の恵みを大切にし、活用したのは、環境にやさしいからだけではなく、木の家が安らぎを与えてくれるからである。工業生産された材料にはない自然の持ち味は、住む人の気持ちを癒してくれる。緑深い森の中を歩むとき、静けさと清らかさの中に感じるものを家にも持ち込んでいけたら嬉しい。

(はやし・あきお/滋賀県立大学教授)