ライデン大学(オランダ)の植物園で。

TV番組を作るという仕事は色々な物事を自分の血や肉にすることだと思う。

幼い頃、私は小さな青い花が大好きだった。なんとか花と一つになりたくて、摘んだり、食べたりとチャレンジしたけれど、摘んだら枯れ、食べたら花が見られない…どうしても思うようにならなかった。ある時、その花は「オオイヌノフグリ」という名前だと知り少しだけ満足した。その後、生物を高校・大学と勉強し、知識が増えるにつれ、だんだんと花が私の掌の中にあるような気になった。知識を得るとまるで世界が自分のものになるような気がするのかもしれない。

ところが、最近、私は知識だけでは満足できなくなった。どんなに情報が増えても花を好きだと思う感情ばかりが大きくなり、一つになるという感覚になれない。しかし、花を写真や絵にしてゆくと、感情が収まっていく。表現というのはこんな時にこそ役に立つ。きっと理解し表現することは、好きなものを自分のものにする作業なのだ。JT生命誌研究館を見学して、あらためてそんなふうに思った。

TV番組を作るのは気になることを取材し、物語にしていく過程。対象への愛情と理解と表現のバランスが一致しなければ番組にならない。愛したものは理解し表現し、自分の分身として大切にしていきたい。

毎春、オオイヌノフグリを見つけては「いつか私のものにしたい」と咳いている。

(もり・みき/NHK教養番組部ディレクター)