日本薬学会のセミナーで。

正直に告白するが、インターネットという言葉を知ったのは、わずか4年前に過ぎない。その私が、今や毎月8万人以上の研究者がアクセスするバイオテクノロジー専門の情報サイト、Biotechnology Japan (BTJ)の管理人(ウェブマスター)をしているというのだから、妻や会社の上司ならずとも呆れ返ってしまうのは当然である。本人すら、メディアと読者のあまりの変化にぜいぜいしながら、日夜格闘しているというのが実状だ。

しかし、この2年間の経験から言えば、インターネットは間違いなく今までの学術情報や専門ニュースの流通形態に急変革を迫り、研究者もそれを強く望んでいる。実際、昨年の分子生物学会の参加者の17%が、BTJが発行するe-mail newsを受信、今年は40%を超えそうだ。あっという間に、アクセス者数は、わが国で発行されているバイオ関連の専門誌の読者数を超えてしまった。

96年夏、私は米国ミズーリ州の大豆畑の真ん中に立っていた。時間を気にしながら、恰幅の良い、がっしりとした農民とのインタビューを終えた時、彼は言った。「もっと詳しいことは俺のホームページを見てくれ」。耳を疑い、目が点になった。その時の衝撃が、「オタク」などといわれのない誹謗を受けながらも、インターネットに突進した理由である。

今まで、記者という一握りの人間が情報を収集・選択、それ以外にニュースはないという顔をしてきたが、その情報の独占の枠組みが崩れる、滅びの感覚だ。

これからは皆が自由に情報を発信できる。もちろん、そこは単純なパラダイスでなく、混沌かもしれない。しかし、読者と情報の提供者が同一平面上に立てるインターネットは、上下関係ではなく、ネットワークという新しい情報共有関係を提供する。このチャンスを活かし、皆で幸せになる仕組みを作るのが私たちの挑戦だ。

皆さん、ネットワークでお会いしましょう。

(みやた・みつる/日経BP社医療局ニュースセンター長・Biotechnology Japan Webmaster)