1. トップ
  2. 季刊「生命誌」
  3. 季刊「生命誌」100号
  4. RESEARCH RESEARCH 02 研究室再訪 生きもの研究の広がりと生命誌のこれから

生命誌ジャーナル

季刊「生命誌」のこれからに向けて、皆さまの声をお寄せください!

<100号テーマ>

わたしの今いるところ、そしてこれから

100号目次へ

RESEARCH 02研究室再訪

生きもの研究の広がりと生命誌のこれから

霊長類ゲノムとそのはたらきを読み解く

郷 康広(自然科学研究機構・生命創成探究センター) 

聞き手:JT生命誌研究館 表現を通して生きものを考えるセクター 川名沙羅、中井彩香

1. 世代をつないでいくなかで変化するゲノム

09年にご寄稿いただいた「環境と会話して変化するやわらかなゲノム」では味覚、嗅覚など五感を生み出す受容体遺伝子の変遷について、ほ乳類ゲノムから見えてきたことを教えていただきました。ゲノムから生きものの進化を探る研究の今を知りたいと思い、今日は参りました。

09年にご紹介した感覚受容体遺伝子の解析は、その変遷から生きものらしさの一側面がみえ、自分自身も非常に楽しみながら研究していました。一方で「ゲノムのごく一部しか見ていない」ことにジレンマも抱えていたのです。ヒトゲノムは30億塩基対、その中に約25,000個の遺伝子があります。感覚の遺伝子はたかだか数百個〜千数百個、それ以外の24,000は見ていない。本当の意味でのゲノム研究ができていないもどかしさがあったのです。技術革新でゲノムを読むコストも時間も縮小されたことに後押しをされ、今はゲノム全体を比較しながら進化を探る研究を進めています。

2017年にはチンパンジーのアユムと母親のアイ、父親のアキラ、親子3頭の高精度ゲノムを発表されたそうですね。

この研究で目指したのは、両親から子供にゲノムが受け継がれる際にどれくらい塩基配列が変化するのか、その詳細を知ることです。生きものはみなゲノムを親から子へと代々受け継ぎ、長い時間をかけて進化してきました。親の完全なコピーが受け渡されているのでは、進化は起きないわけで、ゲノムの何カ所かが変わる、その変異が蓄積していくことが進化の重要な駆動源だと考えられています。そこで一世代で起こる変異の詳細を見る解析に挑戦しました。これまでヒトの親子トリオ(父、母、子)ゲノムは前例がありますが、チンパンジーでは世界初です。

親子1世代にどれくらいの違いが見つかったのでしょうか?

ゲノム約30億塩基対のうち、解析することが難しい繰り返し配列などを除いた領域に、子どもがもつ新規突然変異(de novo mutation)を45箇所見つけました。

たった45箇所ですか。あたり前かもしれませんが、ほとんど変わらないのですね。

1世代の変異は本当にごくわずかです。だからこそ今回の研究では高精度の解析をしました。ゲノムを読む機械は完璧ではありません。数千塩基に1回の割合で読み間違いをしますので、同じ配列を繰り返し読むことで間違いを修復します。通常はゲノムの30倍程度の配列を読みますが、私たちは150倍もの配列を読みました。
私たちのからだを構成する細胞は、次世代へとつながる生殖細胞系列(精子、卵子)と一代かぎりの体細胞系列に分かれます。今回の結果から生殖細胞系列で起きる新規一塩基突然変異率を計算すると1億塩基対あたり1.48個、ヒトで報告されている変異率(0.96〜1.2)より高い結果が出ました。そして新規突然変異の約75%が父親の精子由来だということもわかりました。これはヒトのゲノム研究からも指摘されていることです。

全ゲノム配列を高精度に決定したチンパンジー親子成果論文:Tatsumoto et al., (2017) Scientific reports 7(1) 13561

お母さん由来とお父さん由来のDNAでは変異率がかなり違うのですね。

これまで指摘されてきたのは、精子と卵子を作る過程の細胞分裂の回数の影響です。女性は自分がまだ胎児だった時期に一生分の卵子を細胞分裂によって生み出し、その後は増えません。一方で、男性の場合は思春期に精巣が成熟し、細胞分裂を始めて、日々精子を生み出しています。指数関数的に生み出し続けるのです。細胞が分裂するということは、その度に一定の割合でDNA複製のエラーが起こりますので、変異率は分裂回数に比例して大きくなると考えられています。

新規突然変異率がヒトよりチンパンジーのほうが高いとお聞きして「チンパンジーの方が進化の駆動力が強いのかな」と思ってしまいますが。

それは難しい問題で、単純に答えは出せません。今回の結果はあくまで1組の親子のもので、それがチンパンジーの平均値なのか特殊な例なのかは今後明らかになることです。京都大学の霊長類研究所(霊長研)には6組のチンパンジー家族が生活しているので、現在は他の親子のゲノムを読んでいます。
また変異率はからだが小さい動物のほうが高くなる傾向があります。例えば、マウスとヒトを比べると、マウスのほうが圧倒的に変異率が高い。それは、細胞の分裂速度が速いとか、代謝が速い、世代時間が短いといったことが原因だと考えられています。古い文献ですがヒトとチンパンジーの場合、精子が分裂して、1個が2個になるというサイクルの回り方が、ヒトは平均16日、チンパンジーは14日とチンパンジーの方が早いという報告があります。変異率に差があるとしたら、その影響が考えられるのではないかと現時点では予想しています。ゲノムに蓄積していく変異と生きものの進化の関係を知るには、分子レベルの解析から形態などの表現型までをつないで理解する必要があり、ここはまだブラックボックスです。今回の研究は進化を知るための基礎の基礎のデータなのです。

2. ヒトとチンパンジーが分かれたのは?

ヒトとチンパンジーはおよそ600〜700万年前に別れたといわれますが、この数字も変わりますか?

今後の研究で変わる可能性はあります。分岐年代の計算では変異率を1.0×10のマイナス9乗(per site per year)と仮定しています。

ヒトもチンパンジーも同じ変異率だと仮定しているのですか?

そうです。この変異率は誰かが証明したものではなく集団遺伝学で伝統的に用いられてきたものです。私たちの今回の研究結果から分岐年代を計算すると約900万年前となります。もっともDNAによる分岐年代の計算はあくまで推定であり、進化を知る直接的な証拠は化石しかありません。
以前の化石研究からはチンパンジーとヒトの分岐が1500万年前ほどだと予想されていました。一方DNA研究では400万年前と推定していた時期もあり、化石研究とDNA研究の見解に非常に大きな乖離があったのです。その後、化石研究でより新しい地層から化石が発見されるなど証拠が増え、DNA研究もデータ量が増えて両分野での見解の乖離が次第に縮まってきているのが現状です。今回の私たちの結果は現在の化石研究の成果とも矛盾しない数値なので、東京大学総合研究博物館の諏訪先生にお伝えしたところとても喜んでくださいました。

化石研究とDNA研究の両方から徐々に確からしい数字に近づきつつあるという状況なのですね。今後のゲノム研究では高精度でのゲノム解読がどんどん進むのでしょうか?

今回のように1塩基単位の変異率を知りたい場合は高精度で読む必要があります。というのも、今回の結果をもとにデータ数を減らした場合の検証をしたところ、機械の読み違いの影響を受けて、変異率が変わってしまうことがわかりました。ただ、高精度でゲノムを読むにはかなりのコストがかかるため、すべての研究で行えるわけではありません。ヒトゲノム解読の分野では医療への応用という期待もあり、コストを下げる努力がなされています。
2003年にヒトゲノムのプロジェクトは一区切りしましたが、そこから更にヒト全体の多様性と一人一人の個性を知るプロジェクトが進められ、大規模なヒトゲノムのカタログづくりが進んでいます。1塩基変異が1世代でどれくらいあるのか、大きな構造変化がどのようなパターンでどれくらいの頻度で起きるのか。文字情報で言えば「てにをは」が変わるのか、1ページ分がゴソッとなくなるのかという違いを知ろうとしています。ゲノムの変化は進化の一番大元となる素材です。70億人全員のゲノムのカタログづくりまではいかないでしょうが、100万人規模までは進んでいます。ヒトゲノムのカタログがあれば、低い精度でゲノムを読んでもカタログを参照してデータを補うことができ、個人ゲノム解析のコスト削減にもつながるのです。

ゲノムの構造多型影響をうける塩基数などにより分類されている。今回の研究ではSNVに注目した解析を行った。

ヒトゲノム研究で蓄積された情報が、医療への応用の他に、生きものとしてのヒトを知ることにつながるといいなと思います。自然や生きものにはたくさん不思議がありますけど、自分自身の存在が一番不思議ですから。

私の究極的な問いは「ヒトとチンパンジーを違えているものは何か、ヒトはどのように進化してきたのか」です。やはりヒトだけを見ていてもヒトのことはわからない。他の霊長類との比較からヒトの特徴や進化を理解したいと思っています。形態形成や生理的な変化とゲノム情報を結びつけていかないと、進化はわかりません。様々な階層で種間の違いが見えた時、ゲノムにもそれに対応する形で何らかの違いがあらわれているはずです。より正確なゲノム情報を知ることには大きな意味がある。今回の研究で出したデータは将来も、進化研究で必要になるはずです。正直、ちょっと地味な研究なのですけれど、大事なことだと思っています。

3. ゲノムの使い方の違いを知る

郷さんはゲノム情報がからだの中でどのように使われるか、遺伝子発現の比較も進めていらっしゃいますね。

ヒトとチンパンジーのゲノムの違いはたった1.2%で、遺伝子もほぼ同じですが、その使い方の違いが2種間の違いに大きく影響していると考えられます。脳に注目して遺伝子発現解析をすすめ、2018年にはヒト、チンパンジー、ゴリラ、テナガザルという4種類の霊長類の解析結果を発表しました。

脳に注目されたのはなぜでしょう?

ひとつは形態的に明瞭な違いがあることです。他の臓器、例えば肝臓や胃などはもちろん大きさなどは違いますが、それほど形に違いはありません。脳は形も大きさもヒトとチンパンジーでは明らかに異なります。脳は多様な関心が集まる器官でもあり、分野を超えた協力がしやすいのです。

確かに、考えるのも感じるのも、何をするにも脳のはたらきなしには生きられませんから、日常感覚としても脳はとても気になります。2018年の成果ではどのようなことが見えてきたのでしょうか?

この研究では脳の8つの領域ごとに遺伝子発現の違いをみました。といっても、どの遺伝子に発現量の差があるか単純に比較をするわけではありません。遺伝子は互いに関わり合いながら複雑な発現のネットワークをつくっています。遺伝子の種類によって発現量の変化の影響力が異なるのです。私はよく航空路線のネットワークに例えます。アメリカの場合、シカゴやアトランタは多くの空港とつながるハブ空港で、これが閉鎖されると広範囲に影響が出ます。一方でハブ空港と1日1便しか結ばれていないような地方の空港が閉鎖されても、局所的な影響に留まります。遺伝子のはたらきもそれぞれ並列ではなく、例えば、シグナル伝達経路などの上流で転写因子としてはたらく遺伝子は多数の下流の遺伝子の発現を変えます。遺伝子の種類によって他の遺伝子への影響力が異なるので、個々の遺伝子の役割に応じた重みづけをしたうえで解析しました。これを8つの脳領域間で比較することで、ヒトに特異的な遺伝子発現のパターンが見えてきました。ヒトでは影響力の高い遺伝子の脳内各領域間での発現変化が、チンパンジーより大きいのです。

解析に用いた8つの脳領域図はXu et al., (2018) Genome research28(8): 1097–1110.より改変した。

それは、ヒトの脳の中での役割分担と、領域ごとの特徴がはっきりしているということでしょうか?

私はそう考えています。神経科学の視点から、ヒトの進化過程で脳内の機能分化が進んだのではないかと言われてきました。遺伝子発現の面からも、ヒトの脳は他に比べて領域ごとに明瞭な特徴をもつ、メリハリのついた脳を持っていると言えそうです。そしてヒト特異的な発現を示す遺伝子の半数以上が、海馬のニューロンとグリア細胞(註1)註1:グリア細胞神経系を構成するニューロン(神経細胞)ではない細胞の総称。脳内の環境を整えたり、栄養を供給したりしており、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、ミクログリアなどがある。

関連記事
季刊「生命誌」91号
生涯はたらくニューロンを支える脳の免疫担当細胞
石井さなえ

季刊「生命誌」48号
柔軟な脳のはたらきを支えるアストロサイト
森田光洋
のひとつであるアストロサイトで見られました。

海馬は記憶に関わると言われている領域ですよね。

海馬は記憶中枢であり短期の記憶に重要です。例えば、電話番号をぱっと言われて30秒ぐらい覚えていられるのは短期記憶で、長期記憶は海馬から他の領域にうつされて記憶として蓄えられていると言われています。また、これまで脳内の脇役のように思われていたアストロサイトはニューロンの分化を助けるなど重要な役割をもつことがわかってきました。以前はニューロンの研究ばかりだった脳神経科学で今はグリア細胞にも注目が集まってきています。

脇役だと思われていた細胞が、ひょっとするとヒトらしさに関わっているかもしれませんね。今後が楽しみです。

今回ニューロンだけでなく、アストロサイトに特徴が見えたことは、大きな成果だと私自身も感じています。ところで、2018年の研究ではゲノムの化学修飾であるエピジェネティクス(註2)註2:エピジェネティクスDNAの塩基配列を変えずに遺伝子発現を制御したり、伝達するしくみ。細胞内のDNAは、ヒストンタンパク質に巻きついた形で存在しておりヒストンタンパク質がアセチル化などの化学修飾を受けるとDNAのありようが変化する。またDNA自身もメチル化などの修飾を受け、それによってはたらきが変わってくる。

関連記事
季刊「生命誌」87号
ヒトから知るエピジェネティクスと進化
有馬隆博
の解析も行いました。その結果、ヒトとチンパンジーの種間の遺伝子発現の差を生み出す主な要因は転写因子であり、一方、脳の領域間の発現の違いにはエピジェネティクスが大きく関わっていることがわかりました。ゲノムの塩基配列は個体の一生の間、変わりませんが、エピジェネティクスは環境の影響などにより変化します。ゲノムの柔軟性を知るためにエピジェネティクスの情報も重要です。
また、最近はひとつの細胞の中の遺伝子発現を網羅的にみるシングルセルの研究にも力を入れています。

個々の細胞の個性を見ていくのですね。

そうです。組織を構成する細胞をひとつひとつばらして遺伝子発現を見る研究が、今、発生、免疫、がんなどの研究で進んでいます。この手法を私は進化研究に活かしたいのです。脳の特定の領域にある、興奮性ニューロン、抑制性ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトなどの細胞の種と数を定量的にヒトとチンパンジーで比較しながら、構造の違いを見ていく。ひょっとしたらチンパンジーやゴリラにはなく、ヒトにしかない細胞が見つかるのではないかと期待しています。
実は2018年8月の『Science』にヒト特異的なニューロンを見つけたという論文が出ました。しかしそれはマウスとの比較研究です。私はチンパンジーとヒトで脳の違いを一細胞レベルで追及していきたい。ゲノムと細胞を対象に分子レベルでの種間の差について知見をひとつひとつ積み上げることが必要だと考えています。行動や認知など上位の階層から探る研究もたくさんありますから、それらの知見と重ね合わせることで脳の違いの全体像が見えるはずです。自分の研究人生の中でどこまでいけるか、自分自身も楽しみです。20年後、ヒトとチンパンジーの違い、少なくとも脳の違いを具体的に語れるようになることが目標です。

4. ゲノムに書かれていること

郷さんの研究対象は常に霊長類だったのですか?

そうです、大学院生から京都大学の霊長研に所属しました。最初は心理学に興味があったんですよ。ただ心のはたらきは定量的に捉えることが難しいと感じました。一方、遺伝子はATGCのデジタル情報です。そこに違いがあれば、誰が見ても違うものだと言える。その方が、自分の感覚に近く、分子を扱うことにしたわけです。霊長研で、形態学や心理学の方と一緒に共同研究していた経験が私の原点で、今は神経科学の専門家が多い研究環境です。振り返るとずっと違う分野の人たちとのコラボレーションを続けてきました。

やはりヒトも含めて霊長類には広い分野から関心が集まりますね。霊長類を扱うからこそという大変さもありますか?

チンパンジーやゴリラは絶滅危惧種ですから、研究には様々な制約が伴います。だからこそやる価値があると思っています。実は今回の脳の研究では動物園で亡くなった個体を使わせていただいているのです。霊長研にももちろんチンパンジーがいますが、より多くのチンパンジーが動物園にいます。動物園とうまく協力すれば大型類人猿研究の可能性が広がります。そこで、動物園関係者と研究者の交流の場「GAIN(Great Ape Information Network)」を松沢哲郎先生をはじめとした霊長研の関係者がつくったのです。研究成果を共有しながら、関係を築きあげてきました。私もこれまで様々な動物園を訪れました。その関係を活かし、今回の研究は10年程の年月をかけて実現したものです。こうした取り組みは日本が世界の先駆けで、アメリカでもこれから取り組もうとしているようです。

ゲノム研究も情報科学など他分野の研究者が入ることで新しい展開があるとよいですね。

ゲノム研究は大量のデータを得る技術が進みましたが、研究者がこれを扱い切れず正直、みな悩んでいます。例えば、ゲノムから生きものらしさを知るにはどうすればよいか、大量のデータから理解を引き出すにはどう記述すればよいのか…。みな試行錯誤しています。 
今、世間で注目されているAIも使い方次第です。解きたい問題にどうアプローチするか、生物学を知らないAIの専門家の方と問題を共有するためにこちらも勉強して、何ができるかを知らないといけません。実は今、サル山で多数のニホンザルやマーモセットの行動をみる研究をAIの専門家と進めようとしています。

AIをどのように活用するのですか?

ニホンザルやマーモセットの集団生活の中でのふるまいをビデオで記録し、どの個体とどの個体が出会いどうふるまうのか等、コミュニケーション・パターンの調査にAIの力を借りようとしています。これは、霊長類を用いた精神疾患研究の一環です。ニホンザルやマーモセット1000個体以上のゲノムを調べ、精神神経疾患の候補遺伝子の変異をもつ個体の行動を調べるのです。この研究がきっかけで、神経内科、精神科のお医者さんとの交流が始まりました。脳や心の個性や多様性を分子のことばで語りたい。その1歩です。

脳は特に環境の影響を受けて柔軟に変化していく器官だと思いますが、脳の個性もゲノムから見えてくるのでしょうか?

ゲノムでどこまで語れるか、やってみないとわりません。私自身はやはりゲノムを軸に研究を進めたいと思っています。ゲノムに、その生きもののすべてが書かれているとは思いませんが、例えば、環境によって塩基配列は変わらなくても、エピジェネティクスは変わる。細胞、組織、器官、個体という各階層のはたらきが、エピジェネティクスをふくめた、広い意味でのゲノムに書かれていると考えています。大量のゲノムデータの解釈に私自身もまだ悩んでいますが、ゲノム研究ではおそらくこれからの10年程でブレークスルーがあるだろうと思っています。

ゲノムには何が書いてあるのか? 素朴な問いほど答えるのが難しいとわかりながら、やはり本質が知りたいですね。また、ぜひお話を聞かせてください。 

郷 康広(ごう・やすひろ)

2003年京都大学大学院理学研究科生物科学専攻修了。理学博士。総合研究大学院大学博士研究員、米国ハーバード大学博士研究員、京都大学霊長類研究所助教などを経て2013年より自然科学研究機構特任准教授。現在、同機構生命創成探究センター認知ゲノム科学研究グループ特任准教授、総合研究大学大学生命科学研究科(併任)、生理学研究所認知行動発達機構研究部門(併任)。

TALK

100の対話『生命誌の思い』

RESEARCH01

生命誌研究のこれまでと今

RESEARCH02

生きもの研究の広がりと
生命誌のこれから

SCIENTIST LIBRARY

中村桂子

科学と日常の重ね描きを(前編)

季刊「生命誌」のこれからに向けて

皆さまの声をお寄せください!

生命誌年刊号(書籍)のご案内

季刊「生命誌」の1年分を1冊にまとめた
書籍を翌年の秋に発行しています。

現在、販売中の生命誌年刊号はこちら

BRHメールマガジン

毎月1、15日に生命誌研究館の催し、
ホームページの更新情報、刊行物「季刊・生命誌」の情報などをお届けします。
下記フォームよりお申し込みください。

BRHメールマガジン申し込みフォーム

映像で楽しむ