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Special Story

虫入り琥珀の世界

シュツットガルト州立自然史博物館をたずねて:
上田恭一郎

ドイツの南に広がるバーデンヴルテンベルグ州の州都シュツットガルトは昨年世界陸上選手権が開催されたが、 交響楽団でも有名で、たびたび日本でも公演が行われている。駅を降りるとまずメルセデスベンツの大きなマークが目をひくが、そこから支線のs線に乗り換え、北駅で降りると、緑の深い広大な公園が目の前に、ひろがってくる。駅の階段の壁には、この地方で古くから採掘、研究されている中生代ジュラ紀のワニ類や海にすむ爬虫類イクチオザウルスをはじめとする代表的な化石がレリーフとして置かれ、博物館の導入部を作っている。

【シュツットガルト州立自然史博物館】

地質部門の新館入り口前の広場に置かれたアートふう恐竜が愉快

かつてこの公園のほぼ中央にあった薔薇石城の中に、現世の生物部門と化石や鉱物などの地質部門が一緒に入っていた。その後、1985年に「ライオン門の近くの博物館」 といして地質部門が独立し、この自然博物館が生まれた。入り口にはカマラザウルスのような形のアート的恐竜のモニュメントが置かれ、中にはバーデンヴルテンベルグ州から発見された各地質時代の膨大な量 の化石を中心にさまざまな標本が、いかにも工業国ドイツらしく重厚かつモダンに展示されている。

この博物館の展示にはもう一つ特徴的なものがある。入り口からすぐ左手に入ったところに 1~2階に分かれた展示室「琥珀の部屋」 があり、世界の琥珀がたいへん美しい展示手法で常設されている。 ここの琥珀コレクションは約7000点あり、大半は系統学研究部門の室長ディーター・シュレー博士が収集されたものである。琥珀は有機鉱物であるため熱や光にたいへん弱く、常設展示を行うためにはハロゲン光をはじめファイバーで誘導し冷光にすることをはじめ、さまざまな工夫が必要である。シュレー博士はこのような展示手法を自分で立案、モデル作成などを通 して実験を繰り返し、ふつう展示しにくい貴重な標本を一般にもわかりやすい形で公開された。バルト琥珀、ドミニカ琥珀等のすばらしい標本は、この美しくかつ安全な展示様式でさらにその価値が高まり、琥珀に特別 な関心のない方でも十分楽しめるようになっている。

この展示室ではまず世界を6つのセクションに分け、各地域ごとの代表的な産地の琥珀が全部で19の展示ケースで示されている。代表的な標本を挙げていくと、5kgもの巨大なドミニカ琥珀(これは直立しおり、モーターがゆっくりと回ると、全体がいながらにして見られるようになっている) 、光によって色がブルーに輝く2.8kgものブルーアンバー、2000匹ものアリを含んだドミニカ琥珀、カエル、ヤモリ、トカゲといった脊髄動物まで含んだ琥珀というふうにきりがないが、私たち日本人にとってうれしいのは北海道から九州まで日本の代表的な琥珀がここで一応産地ごとに見れることである。

このような常設展示室が日本ではまだ数少ないことを考えると、博物館ワーカーの端くれとしては大いに反省しなくてはいけないことでもあるが、シュツットガルトを訪れる機会があったならば、ぜひ見学コースに加えていただきたい自然史博物館である。
 

(うえだ・きょういちろう/北九州市立自然史博物館学芸主査)

※所属などはすべて季刊「生命誌」掲載当時の情報です。

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